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机に広げたお弁当箱から目を離して、美羽は体を隣の席に向けた。
友達と昨日のテレビ番組の話題で盛り上がっていると、視界の端にそろーっと伸びてくる手が見えた。
話に夢中になっているふりをしてその手を見逃す。
「もーらいっ!」
「あっ!」
摘まみあげられた卵焼きはそのまま和真の口の中に消えていく。チーズとハムの卵焼きは美羽の手作りで、今日は焼き加減も絶妙。自信作だった。
「あ、これ好きなやつ」と悪びれる様子もなく、和真は指先を舐めて満足そうだ。
そのまま友達の所へ戻っていき、弁当箱には卵焼き一切れ分のスペースが空いてしまった。
「もー、またやられた」
「ほんと仲いいね。幼なじみだっけ?」
「小学校からずっと一緒。いっつもお弁当のおかず取られるの」
ばーか、と呟いて卵焼きを箸で摘まむ。最近知ったこのレシピは中々おいしくて、和真も気に入っているようだ。
頭の中でお気に入りレシピに登録し、冷蔵庫の中身を思い浮かべる。
明日はどんな卵焼きを作ろうか。
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