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トハシ工業はこれまで、いいかげんな仕事をしたことはなかった。代金の支払いもしっかりしていた。アキバ滑車の社員も佐藤主任も、嫌な思いをしたことはなかったはずだ。
それとも自分の知らないことがあるのだろうか?
夜更け、会社の帰り道、和也の頭には様々な疑問が渦巻いていた。
もっとも自分以外の社員も同じことを考えているはず。
となれば、自分は別の考えをしたほうがいいのかもしれない。
和也は少しだけ、足取りが軽くなるのを感じた。佐藤に以前褒められたことを思い出していた。
「大森くん。君の、その逆転の発想ともいうべき考え方はとても大事だ。ただしいつも逆転の発想をする必要はない。ここぞという場面だ。いいね。タイミンを見誤っちゃダメだよ」
今こそそのタイミングだと、和也はそう決めることにした。
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