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「課長、アキバ滑車の方が来ました」  トハシ工業本社で、営業部長をしている春日井は社員にそう呼ばれた。春日井は時計をチラリと見た。予約どおりだった。 「分かった」 「今は、応接室にいます」  春日井は立ち上がると、応接室へと向かった。  応接室にいたのは、一人の青年だった。春日井はその顔に覚えがあった。  挨拶もそこそこに、春日井は席につく。 「大森和也くんだったね」 「はい。会っていただきありがとうございます」 「まあ、分かっていると思うけどさ、これは例外だからね。会社を通さず個人的に会いたいなんていうのは、普通はあんまりないんだから」 「分かっています」 「それで、話っていのは?」 「はい」  大森という青年は軽く息を吸ってから口を開いた。 「2m」  春日井は、ほうっと息を吐いた。  いつ、誰かが来るとは思っていたが、まさかこんな平社員とは思っていなかった。  その一方で、かつてアキバ滑車第一事業部主任の佐藤が言っていた言葉を思い出すと、なんとなくこうなる気もしていた。これが一番いい気もした。
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