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7 永遠の愛を捧げる男の性
登校前の朝の風景。
女子寮の部屋。
ソフィアの特等席は、俺の膝の上。
「ボクのお姉様!」
首に腕を絡ませ、四六時中、すりすりと、頬ずりをする。
そして、んーちゅ、と唇を突きだし、キスを連発。
新婚生活のような甘さ。
「ソフィア、そろそろやめにしなさい。登校するぞ」
「えーっ、もう少し! お姉様、いいでしょ?」
「しょうがない子だ……」
ソフィアは、ひしっと俺にしがみ付く。
「だって、学園では、お姉様とくっつけないんですもの」
ぷーっ、と頬を膨らませ、不満を露わにした。
すっかり、俺とソフィアはイチャラブ展開になった。
まぁ、それもそうだ。
あれ以来、ソフィアはすっかり開き直り、遠慮する事なく俺に性欲をぶつけてくる。
毎晩毎晩、心行くまで抱いてくるのだ。
ガツガツして、まさに若い男の性欲そのもの。
困ったものだ……だか、嬉しい気持ちもあり、満更でもなく複雑。
****
学園では、俺とソフィアの姉妹は、何故か有名になった。
こぞって、いろんな人が挨拶してくる。
「ごきげんよう、マリア、ソフィアちゃん」
「ああ、おはよう」
「おはようございます!」
また、アラン、ロベルト、ヴェイン、ユーリの4王子達も、俺とコミュニケーションを取ろうと近寄ってくる。
ソフィアは、女の感を働かせ、これらの王子が脅威ではないかと敵意を丸出しにする。
ソフィアは、俺から片時も離れようとしない。姉妹だから、まぁ当然なのだが、最近では俺の手をぎゅっと握りしめて俺をリードする。
ようは俺を敵から守る、騎士のつもりなのだ。
その日、ちょうど4人の王子が鉢合わせになった。
「やあ、マリア! 最近は鍛錬はしてるのか? また試合どうだ?」
「マリア、こんなのところにいたのか? お前の好きなお菓子が入ったんだ 一緒に食べないか?」
「おお、マリア。探したぞ! 新しいチェスを買ったんだ、またしよう。今度こそ負けないぞ! ははは」
「マリア、やっと見つけたよ。君の為に新しい曲を書いたんだ、ぜひ聞いて感想をもらえないか?」
ソフィアは、短い手を大きく広げる。
「やめて下さい!!!! 王子様方!! お姉様は、ボクのものなのです! 王子様だろうが、絶対に渡しません!
ささ、お姉様! ボクの後ろに隠れて! 誰にも、ボクのお姉様に指一本触れさせないんだから!」
王子達はたじろぐ。
ソフィアは、
「ね、大丈夫だから、お姉様」
と、いっちょ前に俺に目配せをする。
可愛いナイト様。
愛くるしくて死ねる。
しかし、王子達もそれで諦める様子はない。
それどころか、ソフィアを相手にせず、王子達同士牽制し合う。
「お前ら、何を言ってる! マリアは俺の女。そして良きライバル。勘違いされては困る」
「何をほざく! マリアこそ、俺の麗しい幼馴染にして永遠の恋人。貴様こそ気安くマリアと呼ぶな!」
「ははは、マリアほどの聡明な女は私にこそ相応しい。お前達は諦めるんだな」
「まったく笑わせる。マリアと僕は心から通じ合う特別な関係。君達はマリアから離れなさい」
激しい言い争いが続く。
(はぁ、こうなったか……まぁ、そうだよな。全員寝取った訳だから……)
俺が悪いのだ。
いや、正確には、ストーリー強制力が、原因なのだ。
男なら一度抱いた女は自分のものだと錯覚する感覚は、まぁ、理解できる。 俺も男だしな。
それに、こいつらの根は真面目。
愛した女一筋。マジでいい奴ら、なのは間違いない。
じゃなきゃ、何で俺が男に抱かれなきゃいけねぇんだって話。
王子達は俺に詰め寄る。
「マリア! 君の気持ちはどうなんだ? もちろん俺が好きだろ?」
「まったく、マリア。みんなに言ってくれ。俺を好きだと」
「ふふふ、マリアがお前達を選ぶはずがない。私だからな」
「さぁ、マリア。僕の手を取って! 早く二人だけになろう!」
熱い情熱が伝わってくる。
愛するものを独占したい男の気持ち。
共感しかない。
キュン……。
うぐ、まずい。これではまたしても、いつものパターンだ。
王子達はバチバチ火花を散らす。
一触即発。
いや待てよ。
これはチャンス。
揉めてるうちに、ここから立ち去ればいい。
俺は、スッと一歩下がる。
そして、脱出を試みた。
が、誰かに手首をギュッと掴まれた。
「お姉様!! どこに行かれるのですか!!」
忠実なるボディガードに捕まった。
すっかり忘れていた。
ソフィアは涙目で俺に問いかける。
「ボ、ボクですよね、お姉様。ボクの事が一番好きですよね?」
うるうるした目。
「も、もちろんだ、ソフィア。大好きだ、だから泣くな」
「ほ、本当ですか? だって、ボク……」
言い争う王子達。
ソフィアをなだめる俺。
そうこうしているうちに、アランが声を張り上げた。
「皆、待て! ここで争ってても仕方ない。俺のいう事を聞いてくれ」
一同黙った。
「俺はお前達の気持ち、十分に分かるつもりだ」
アランは続ける。
「俺は、マリアに恋をし、自分がいかにちっぽけな存在か分かった。マリアの事を思うと、切なくて、苦しくて、夜も眠れない……そんな愛を知ってしまった惨めな男だ。お前達もそうなのだろう?」
一同、ざわざわする。
「ああ、そうだな。その通りだ」
「確かに、お前の言う事は分かる」
「僕もそうだ……悔しいがな」
アランは、ロベルト、ヴェイン、ユーリの言葉に、うんうんとうなづく。
「そうだろ、皆、同じ思いなのだ。
で 提案なのだが……。
同じ一人の女を愛してしまった同士。俺達は、マリアを通じ価値観を共にしている。いわば同等な存在。ならばいっそう皆で一緒にマリアを愛する。それでどうか?」
再び、ざわつく。
「……確かに、お前のいう事は正しい。悪くない」
「うむ。いい考えだ。現に、マリアだって困っているのだ」
「そうだな、僕達の思いに大差はない。それに平等なら文句はない」
アランは、腕を高く挙げて言った。
「よし!!! 気持ちはひとつ みんな一緒だ!!!」
4人の王子達は、片手を差し出し円陣を組む。
そして、手を合わせて叫んだ。
『俺達は、全員でマリア愛し抜く!!!!』
俺は、ここまで黙ってみてたが、最後の成り行きに刮目した。
(ここに来て、お、男同士の友情だと!!!)
俺が最も好きな光景。それが目の前に……。
ああ、なんて尊い。
キュンキュン……。
一人の女を巡ってぶつかり合う男の意地。
そして、対立の果てに交わされる固い握手。
友情の芽生え。
(くそっ、ずりいぃぜ。こんな展開ありかよ!)
皆、キラキラした目。
笑顔が溢れる。
まるで、大会を目前にした運動部の男達。
(でも、まずい。まずいぞ、この流れ。また、こいつらが望むがままに体を差し出すはめに……)
と、焦る俺の背後から新たな声が聞こえてきた。
「ボクは仲間ハズレでしょうか! 王子様方!!」
ソフィアの方に注目が集まる。
「だって、ボクだって、ずっと思いを寄せていたのです! お姉様に嫌われないよう、必死に心に押し留めて。この気持ち、王子様方に負けてないとおもいます!!!」
王子達は顔を見合わせる。
そして、皆、にっこりと笑みを漏らした。
「ソフィア、君もこっちへ。君も我らと気持ちを共にする同士。一緒に、お姉さんを愛そう!!」
「はい!!!」
(うぉーー!!
男女を超えた熱い友情だと!?
ちょっと待て! ソフィアは女? いや男? いやいや、この際、そんなのはどうでもいい!
尊い! 尊過ぎて痺れる!!
で、でも……耐えるんだ俺。
ここでトキメいたら何もかも終わる)
わーっと、何かの全国大会で優勝したような歓喜。
全員がいっせいのせで、誓を述べた。
『全員で、マリアに永遠の愛を捧げる!!! おー!!』
青春の爆発。ビッグバン。
キュンキュンキュンキュンキュン……。
(ああ、ダメだ……誰か助けて……)
「マリア、我らの思い。どうか受け取って下さい!!!」
俺は、答えていた。
「……ったく。お前らの気持ちはよく分かったよ。俺は、お前ら一人一人の愛をしっかりと受け止めてやる。さぁ、俺を思う存分愛してくれ」
「マリア!!!」
(ああ、意識が遠くなる……俺はもうだめだ)
****
学園の外れにあるクラブハウス。
男達は、全てを晒し、一人の男の体に群がる。
美しい愛の宴。
俺は、股を大ぴらに開き、王子とヒロインに順にまわされ、愛を注入され続ける。
俺という男の体をこれでもかと貪り尽くす。
時には優しく、時には激しく、時には繊細に、時には大胆に……。
俺の体の中では心地よい刺激がこだまし、快感が沸き上がり溢れていく。
胸キュンが止まらない。
最高に幸せな時間。
『好きだ、好きだよ、好き、愛してる、大好き』
俺を愛する男達の声がこだまする。
俺もこう答える。
「みんなの事、大好きだ。愛おしい。さぁ、もっと愛してくれ。そして、俺をもっと気持ちよくさせてくれ」
『おう、いくよ、分かった、任せて、頑張る』
男達の熱気が心地いい。
体の中が男のもので満たされていく。
なんて気持ちいいんだ。
気持ちよすぎて変になる。
そして、俺は絶頂を迎える。
「……いくっ、いくっ、ううっ……あ、あーっ!!!」
****
愛し疲れた男達はまどろみの中。
その中心で、俺は天井を見つめる。
誰かが俺を見つめている気がした。
(これってバッドエンドじゃないかって? アホ抜かせ。
こんな男達の熱い気持ちをぶつけられて嬉しくない男がいるかよ。
いや、今は令嬢だけどよ。そんなの関係ねぇ。
完全に超ハッピーエンドだろ!!!
最高だぜ、悪役令嬢!!!)
俺は、ソフィアと王子達を起こさないように、そっと、ありがとうのキスをしてまわった。
****
学園のお昼時。
今日もカフェテリア隅のパゴーラで、4人の王子、そしてソフィアとイチャイチャタイム。
皆仲良く、俺の体を愛撫。
キスは当然。シャツの中に手を忍ばせ、ズボンの前を撫で、後ろの膨らみ、割れ目にも手を伸ばす。
やりたい放題。
俺は、気持ちよくて変な声が出るのを必死にこらえる。
(分かっちゃいるけど、男の性欲ってのは底なし。お前ら、やり過ぎだっての……俺の体は一つしかねぇってんだよ……まったく)
俺は悪たれを付くが、それは幸せの裏返し。
そんな俺達のイチャつきを見ている女達のヒソヒソ話も耳に入ってくる。
『マリア様ってすごいわよね。王子様方、みんな虜にしちゃうんだもの』
『ほんと。でも、あんなに美しくて強くて聡明でいらっしゃるのだもの』
『そうよね、当然と言えば、当然かも』
『それに妹のソフィアさんとも仲良くて……本当に羨ましい』
『実はあたしも、マリア様と仲良くなりたいって思ってますの』
『本当に? 実はあたしも』
『だって、ほら。マリア様の事を思うと、スカートの前がこんなにまくり上がってしまって……』
『あら、あたしもですのよ、ほら。こんなに膨らんで……もう恥ずかしい』
『ふふふ、どうしてでしょうか。この性的な興奮、止まらない』
『本当に不思議なお方。マリア様って』
『ああ 愛しのマリア様 あたし達とも親密なお友達になって下さい!!』
と、まぁ、この通り。
俺こと、異世界転生した悪役令嬢マリアは、結局のところバッドエンドを無事に回避。
その上で、真のモテモテヒロインになったと言える。
まぁ、相手は全員男なのだが、今となっては、それはそれで良かったとも言えなくもない。
男同士って、やっぱ最高だぜ!!!
** 悪役令嬢に転生した俺、王子達を寝取りすぎて破滅しかないのだが!?
終わり
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