(終)事件、解決する

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「とにかく、これで事件の方は解決しました。  神里先生、藤本君、ご協力ありがとうございました」 「おう。また何かあったらいつでも来い」 「ありがとうございます」 千波が深々と頭を下げる。深井もそれに合わせる。 「それじゃあ、我々はこれで」 「ああ、ご苦労さん」 ソファから立ち上がる刑事2人に労いの言葉を掛ける。 それから神里は藤本の方に顔を向けた。 「さて、俺たちも行くか。藤本、手を貸してくれ」 「はい」 藤本に支えながら神里がゆっくりと立ち上がる。 ぎっくり腰発症から4日目だからか、これまでより幾分かスムーズに立てているようだった。 「先生たちもこのあと用事ですか?」 「3時から講義があるんだ」 「ああ、そうでしたか」 神里の足取りに合わせて4人でゆっくりと廊下に出た。 講義室へ向かう神里たちと出口へ向かう千波たちとは方向が逆なので、ここでお別れだ。 「では、失礼します」 「おう、宇崎にもよろしく……言わなくていいな」 「あはは」 「さてと。行くぞ、藤本」 「はい、先生」 挨拶もそこそこに神里は千波たちに背を向ける。 そんな神里を支えながら歩く藤本の後ろ姿を見て、深井が呟いた。 「本当に大丈夫なんですかね。  自分も怪我人なのにあんな大柄な人を支えたりして」 「んー……でもよく見て」 「はい?」 「見ての通り、藤本君は先生の体を支えながら歩いてる。  先生は先生で、藤本君がふらつかないように彼の肩を支えてる。  ああ見えて、ちゃんとお互いに支え合ってるのよ」 ゆっくりと歩く2人の後ろ姿を、千波が微笑ましそうに見つめる。 すると深井も納得したように頷いた。 「なるほど」 「さてと。じゃあ、私たちも行きましょう」 「はい」 千波と深井は、神里たちに背を向けて歩き出した。 それぞれの行くべき場所へ。 窓から差し込む春の陽気が眩しい。 大学構内では、学生たちの賑やかな声があちこちで響いていた。 (終)
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