(終)事件、解決する

1/3
前へ
/103ページ
次へ

(終)事件、解決する

「というわけで、久須野良也も白井百合花も全面的に罪状を認めています。  ただ、我々の目では主導的立場は白井百合花で間違いありませんが、  直接的に殺人教唆となる言葉は使われていないようなので、  裁判ではどうなることやら……ってところですね」 「そうだな。過去の事例を見ても、  理解に苦しむ判決ってのは枚挙にいとまがねえからな」 「担当する裁判長がまともな人間であることを祈るばかりですね」 「全くだ」 深く頷きながら神里はコーヒーを啜る。 慶田大学の神里の研究室にて、神里と藤本、千波と深井がソファで向かい合わせに座っていた。 久須野と白井を逮捕してから2日後のこと、事の顛末を報告する為に千波と深井が研究室を訪れたのだ。 「そうそう、2年前に自殺として扱われた糸田悟郎さんの件も、  殺人事件として再捜査されるみたいですよ」 「そうか。そいつは良かったな。  息子の苦労も少しは報われるだろう。なあ、藤本」 「え? あ、そうですね」 突然話を振られて、藤本は曖昧に返事をする。 そんな彼の頭には白い包帯が巻かれていた。 「ところで、糸田さんのご家族は……どんな反応をしてましたか?」 「最初は泣いて困惑してましたが、“こんな事になったのは自分たちのせいでもあるから”と言ってました。これからは家族で糸田さんを支えるそうですよ」 「そうですか。それは良かった」 藤本がほっと息をつくと、神里がその背中をポンと叩いた。 更に千波が話を続ける。 「それから、ずっと鑑定中だった兼河さんの死因なんですが、  脳挫傷であることが確定しました」 「刺し傷の方は死因に当たらなかったのか」 「はい。だから糸田さんは殺人罪には問われないですね」 「そいつは朗報だな」 「まあ、さすがに無罪というわけにはいきませんが、  自首しているので大分罪は軽減されると思います」 「ほう。そうか」 「彼の場合、情状酌量の余地もありますからね」 「まあな」 神里が腕組みをして頷く。 その時、藤本が小さく挙手をした。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加