(26)助手、説得する

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必要な話は聞き終えたと判断して、藤本は糸田の肩に手を置いた。 「やはり、自首してあるがままを警察に話しましょう。  貴方は久須野さんの従犯となるので、更に罪は軽くなるはずです」 「でも……」 糸田は尚も顔を苦しげに歪めたまま首を横に振った。 「もしかしたら、本当は俺が兼河さんを殺したのかも知れない」 「どういうことですか?」 「兼河さんを殺したのは久須野さんだと、  そう信じたくてそう思い込むようにしてたけど……  でも、もしかしたらあの時の兼河さんは実はまだ息があって、  俺が後から刺したのが原因で死んだんじゃないかって……  もしそうだったら俺は……」 「だとしても、あるがままの真実を伝えるべきです。  それが貴方にとって一番マシな選択になるはずです」 「……」 糸田はしばらく無言で俯いた後、静かに顔を上げた。 「分かりました」 ゆっくりと首を縦に下ろした糸田を見て、藤本は小さく息をつく。 説得に成功した、と胸を撫で下ろしたのだ。 そんな彼を、糸田は真っ直ぐに見つめた。 「藤本さん」 「何ですか?」 藤本が問うと、糸田はサイドテーブルに置いていた彼のショルダーバッグを手に取った。 そして中から一冊の手帳を取り出す。 それは茶色い革カバーの付いたシステム手帳だった。
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