(30)容疑者、話す

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──白井百合花。 ──貴女と兼河保志さんとの関係は? 「お答えすることはありません」 ──兼河さんから脅迫を受けていた? 「お答えすることはありません」 ──久須野さんは、貴女が兼河さんからストーカー被害を受けていたと証言しているが? 「お答えすることはありません」 ──兼河さんは貴女のプライベートな画像を持っていて、それをばら撒かない代わりに現金を受け取っていたという話があるが、それは本当か? 「お答えすることはありません」 ──こちらで調べた結果、兼河さんの所持品から貴女の画像は発見できなかった。本当にストーカー被害はあったのか? 「お答えすることはありません」 ──兼河さんから脅迫されていた本当の理由は何か? 「お答えすることはありません」 ──久須野さんの貴女への好意を利用して、彼に兼河さんを殺させようとしたのか? 「あれは久須野さんが勝手にやったことです。  私は兼河さんを殺して欲しいなんて言ったことはありません」 ──“父親の形見のネックレスだけはどうしても取り返したい“、と久須野さんに言っていたそうだが? 「……」 ──貴女の父親は健在のはずだ。幼い時に生き別れた実の父親も、母親の再婚相手である継父も。 「……うるさい」 ──兼河さんが所持していたネックレスに執着していた理由は? 「知らない」 ──貴女が身に付けていた銀のネックレスについて。こちらで調べたところ、錆部分は人間の血液だったことが判明した。DNA鑑定により、その血液は2年前に亡くなった糸田悟郎さんのものであると判明した。これはどういうことか? 「知らない。知らない知らない知らない」 ──2年前、貴女は糸田悟郎さんと交際していた。糸田悟郎さんは、貴女のアルバイト先の上司だった。そんな糸田さんが、当時貴女が住んでいたマンションから飛び降り自殺をした。 「それが何よ? そんな話、今は関係ないでしょ」 ──だが、本当は自殺ではなく、貴女が殺害したのではないか? 貴女のネックレスに付いていた糸田さんの血は、その時のものなのではないか? 「な、何よそれ……」 ──それから、殺害した糸田さんを自殺に見せかける為、屋上から投げ落としたのではないか? 「……」 ──そして、何らかの理由で貴女が糸田さんを殺害したことを知った兼河さんから、黙っている代わりに現金を寄越すようにと脅迫されたのではないか? 「……」 ──そんな生活が嫌になって、自分に惚れ込んでる久須野さんを利用して、兼河さんを殺害するように仕向けたのではないか? 「……うるさい」 ──また、貴女が何としてでも兼河からネックレスを取り戻そうとしたのは、それが糸田悟郎さん殺害の証拠品だったからなのでは? 「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!  悪いのはあの男よ! 全部、全部あいつが悪いのよ!」
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