imitation of christ

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そんなある日、何日経っても馴染めないお屋敷暮らしではあったけど、僕が外に出たらマズいらしく(アルバイート・ダリイと云う百年程前の著名な画家が、僕の若い頃の写真を元に肖像画を描いており、それは「双葉紫明教」のアイコンになっていた)実質軟禁状態だったのでそこに順応するしかなかった。 そんな生活は小説を書くには好都合だったから、僕は「おっぱいは性交のもと」を単なる娯楽小説から啓蒙的なものにこっそりシフトチェンジして地下の人々の覚醒と蜂起を促そうとひたすら書いた。 地上を快適に一部の人間が寡占する為に造られた地下の似非天国。 そこで人々は、利便に意欲を奪われ、iを経由して人工知能に本能までコントロールされている。 家畜。 そこで僕はもと居た時代のすべての家畜たちが一斉蜂起したらどうなるかを考えた。数のうえでは優勢でも、そのままの彼らでは容易く人間たちに制圧されて、より厳しい管理下に置かれるだろう。火を見るより明らかだ。彼らは柵や檻から逃げ出したところで、何も出来ないんだから。まずはiを利用して反逆の種を蒔く。本能を呼び覚ますんだ。同時に元の時代で書きかけていた「過保護論」という作品を読んで貰って覚醒を促すんだ。人工知能を利用して、人々が理性と本能を取り戻した時にiを機能不全にする。最初はみんな戸惑うだろうけど、僕は人間を信じる。壮大な計画だ。もしかしたら30年延びた寿命でも追いつかないかもしれない。もっと手っ取り早い手段を選ぶべきかもしれない。けれどもまず人工知能を利用し、潰す。本丸はそれを仕組んだ奴らだ。その構図に気付いているのは僕と弥生ちゃん、お父さん、それにその周囲の極少数だ。下手に動いちゃダメなんだ。奴らが500年前のただのクズである僕を利用して作り上げたこの世界をひっくり返すんだから、奴らの手法を真似るのがいちばんだ。目には目を。奴らは僕を似非神に仕立てた。そして地下の人々にAIという本当の似非神を降臨させた。どうせ野垂れ死ぬ未来しかなかったんだ。似非神にでもなってやるさ。未来の未来を変えるんだ。もしかしたらそれが僕の子供たちが生きる未来を変えるかもしれない。 命を賭す価値はある。 ガチャ 「あれ?弥生ちゃん。どーしたの?」「わたし、恥ずかしいけど、また、そのお…」 すっかり性格まで変わってるみたいだ。いったいどっちが本当なんだろう?
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