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murder mystery
なんだかみんなの反応が不自然な気がしたけど、一種のジェネレーションギャップかもしれないなとも思った。
お屋敷はてんやわんやとなり、メイドや使用人達の中には取り乱す人も見られた。
山口県の病院から「手の施しようがなく、屋敷へヘリで搬送する」旨連絡があったのだ。
僕らは深夜、庭のヘリポートに集まった。風に舞う落ち葉に腕を額のあたりに当てながら搬入を見守るみんなの中で、やっぱり弥生ちゃんは冷静に見えた。
吉村が目をふせ、こちらに向けて静かに首を横に2度振った。やっぱり芝居掛かってたけど、不謹慎な気がして深くは考えなかった。
弥生ちゃんがみんなの前にスッと出て「みんな、深夜にありがとう。父上と最後のお別れがしたいの。良いかしら?」と言うと、吉村に目をやり、白い布に包まれ担架に乗せられた遺体を生前の寝室へと運び込んだ。
僕はそこに加わるのを遠慮した。弥生ちゃんと吉村は僕を気にする様子もなく寝室へ入り扉を閉めた。作戦変更、どうしよう?そう思う間もなく扉が開く音、薄く開けた隙間から覗いた弥生ちゃんが手招きをした。ついで人差し指を唇に当てた。
僕は周囲を見廻して誰も見てない事を確認し、分厚い防音扉を潜り寝室へ入った。すかさず扉をロックした弥生ちゃんは、堪えかねたみたいにケラケラ腹を抱えて笑い出した。
あまりのショックに狂ったんだろうか?
いたたまれない思いで見つめる僕を指差して笑い続ける弥生ちゃん、いや、僕じゃない、気付いた指差す先の僕の背後からは、「ハッハッハでヤンス」と吉村の笑い声。こいつらの仕業、だからあんな風だったのか?!と振り返ると信じ難い光景が目に入った。
そこにはいつも通りの永瀬父が吉村と穏やかに談笑していたのだ。
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