陰核寺

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 天井を見上げてぼーっと、元の世界を思い出していた。右のもみ上げから伝う涙を拭い上げる指。クリちゃんがこっち向いて見つめていた。 「泣いちゃ、ダメ。男の子でしょ?」  いつもの大人の色香を纏った滝沢クリトリスが居た。 「私、あなたの事は知ってたわ。次期総裁として、あなたを籠絡するつもりだった。うん、ちゃんと話すわ。私は永瀬さんにシンパシーを感じていた。けれど、派閥の中で私の本心なんて無いも同然なの。パワーゲームに担ぎ出されてただのアイコンとして矢面に立って、そのうち不祥事をなすりつけられてお役御免。そういうものだって。永瀬さんが失脚した今は、希望が無かったの」 「僕は過去から来たからきみを知らないんだ。ただきみが演じてるって事だけは感じた。演じないで生きてる人なんて居ないかもしれないけど、きみは居心地悪そうだった」 「あなたは知らないでしょうけど、少子化に歯止めをかけるべく4年に一度男性の精力を競うシコリンピックが開催されてるの。アナウンサーだった私は東京シコリンピック招致にカリ出されてお、も、ら、し、のスピーチで見事に開催を射止め、そのまま東京シコリンピックのアンバサダーに就任したの。私が率先しておもらししなきゃいけない重圧から浣腸に液体を仕込んで膣圧で噴射する事を思い付いた。仕込む液体はアンバサダーだからアンバサだと思ったわ」 「なるほど。それで後に引けなくなったんだね?」 「そう。いつも浣腸を仕込んでなきゃならなかった私は次第にそれを性的な快楽に置換して、痴漢されてはスプラッシュしていた。私はおもらしの人だから、おもらさないわけにはいかなかった。おもらしせずにイけなくなったの」 「なるほど。それで、きみを政界にまで引っ張り出しておもらしさせ続けた黒幕はいったい誰なんだい?」 「ビッグダディーよ。みんなきよしさんって呼んでるわ」 「なんか聞き覚えあるような…」 「彼は既に離婚再婚をクリ返して数十人の子供を女性達に産ませてるわ。そんな自分を正当化する為、実効性の無い見せかけの少子化対策を打ち出して、少子化を助長してるの。シコリンピックなんて、単なる精子の無駄遣いだもの。もっともらしい陰謀論の数々はすべてカムフラージュよ」 「そんなくだらない理由で…」 「きよしさんは各種メディアに太いパイプを持ってるし、好感度も高い。ある種教祖的な存在にまでなってる。それに成人した子供たちは各界で暗躍し、就学児たちは教育現場への介入の糸口になってる。まるで張り巡らされた蜘蛛の糸みたいにこの国を支配してる。私のおもらしは、性癖を受精から逸らしつつ人々に性的な印象を与える便利な道具なの」
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