陰核寺

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「荒唐無稽に聞こえるけど、だいたいの構図はわかった。きみはビッグダディーに目を付けられて、きっとあのままでは種付けられてしまっただろう。そこできみは常に膣に浣腸を仕込んだ。それでさしものきよしさんも手が出せなくなった。だってきみのアソコにはいつも先客が居たからね。なんて知的な戦略なんだ」 「ありがとう。でも…」 「そう。でもきみは中イキを失い、出産適齢期も逃してしまった」 「ふふっ。若かった私は浅はかだったわ。一時凌ぎと思ってた。けど彼は甘くなかった。私が気を抜いて浣腸を抜くとフル勃起の彼が居たわ。私は慌てて浣腸を挿れ直してありあわせの炭酸飲料を注入して彼に噴射したわ」 「なるほど。それでマウンテンデューだったりC.C.レモンだったり…」 「ええ。時にはリアルゴールドも使ったけど、量的にイマイチだったの」 「結局きみは更年期オバチャンになるまで彼の精液を受け入れたくないばかりに常に浣腸液を受け入れ続けた。きよし、なんてやつだ。ひとりの女をそんな目に遭わせる奴が裏でこの国を牛耳ってて良いわけがない。総裁の地位も、この立派な豪邸もきみへの報酬のつもりなのか?」 「そうかも知れないわね。私が望む望まないは別だけど」 「きみは、きみのおもらしはやっぱり美しいよ。そしてこの陰核寺は芸術そのものだ。世の不条理を呑み込んで、京の都に佇んでいる。けれどそれはきみの悲しみの結晶だ。きみの悲しみは僕の悲しみだし、きっと誰かの悲しみなんだ。こんな美人で賢いクリちゃんが女盛りに中イキ出来ずに歳を重ねてしまった。きらびやかな表の顔なんかより、きみの人生にそっちのが重大だよ。何度も挑戦して得られなかったなら別だ。けれどもきみは挑戦する機会を奪われてしまった。だからこそ美しいこの陰核寺、今夜僕が燃やそう。そしてきみは殺された事にして地下に潜るんだ。知っての通り永瀬さんたちは地下に潜伏している。きっと地下の人たちの蜂起を促してくれる。僕はそれを信じて動いている。きみはもう仲間だ。これ以上辛い思いなんかさせない。もう手筈は整えてある。吉村という男がきみを迎えに来るから、僕がこの陰核寺に火をつけたらきみは地下へ逃げるんだ。いいね?」 「あなたはどうなるの?放火犯になっちゃうわ。さすがにわたしのおもらしでも火事は消せない。私がこのまま総裁になって顔面騎乗であなた達に協力する事だって出来るわ。その方が良いわ」 「面従腹背か。良いアイデアだね。でもそれじゃきみは苦しみから開放されないし、やっこさん、やすやすと騙されるタマだと思うかい?」 僕はシーツの端にライターで火を点けるとクリちゃんの手を引きベッドから起き上がると、ゆっくり服を着ながら炎が上がるのを待った。
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