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30秒ほど経って表示された加工後の波多野は、頼んでもいないのに何故か赤とオレンジのグラデーションのロングヘアが爆発した謎のキャラに仕上がっている。
「ギャハハハ!なにこれ!ロックバンド?アニメキャラ?まじウケるんですけどー!?」
表情と背景の真面目さに対して明らかに合っていないそのヘアスタイルに大笑いする佐々木。しかし、伸ばされた髪自体は波多野の頭によく馴染み、それが更に笑いを呼ぶ。もうこの髪は波多野のために存在しているのだと確信できるようなフィット感であった。
「あー、これ他の同期にも見せてあげたいわー」
そんな事を考えていると、机に置いていた佐々木の会社用スマホが鳴った。
「あーハイハイ。お疲れ様です佐々木です〜。
あ、はい、商品の確認ですね~。分かりました今からそちらに向かいま〜す」
休憩も終わり、仕事の指示が出たため佐々木はノートパソコンをパタンと閉じ、スマホだけを持って部屋を出た。
「くそ、あの新人生意気な!
遅刻や居眠りばかりで注意しても反省する気配なし。何か注意すればすぐに『労基に訴えてやる』と言ってくる。はー、何て面倒な奴を採用したんだこの会社は」
佐々木と入れ替わりに部屋に戻って来た波多野もまた、彼女に不満を抱いていた。
彼は先程まで続いていた取引先との商談を終え、他の社員と入れ替わりになるように休憩を取る。
「そういや、社員の写真確認するよう言われてたな。ちょっくら覗いてみるか…」
自部門のフォルダをクリックし、画像ファイルを一覧で確認できるよう表示を切り替える。
すると、ズラリと並んで表示された中に、一つだけ異様に目立つ写真があるのを見つけた。
「ん?何だこの派手なのは……って、俺やないかい!!」
真面目な背景と服装の社員の写真が並ぶ中、波多野だけ、赤とオレンジのグラデーションが効いたロングヘアがキラキラと輝いている。
「いや、ありえんやろ、これ!!何で俺こんな髪型になってんだよ!」
そこで脳裏に浮かび上がったのは、あの生意気な新人のニヤける顔。
――絶対あいつだ。このフォルダを開いてわざわざこんな真似してくるのはあいつ、佐々木しかいない!
過去にも食事中に隠し撮りされて変な吹き出し付けた合成画像をSNSで晒されたことがあった。
「……ふふふ、覚えてろよ。こうなったら仕返ししてやる!」
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