伸ばし伸ばされた二人

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 波多野は佐々木の写真を“盛りまくり.com”にアップロードする。  彼女のバッチバチに決めたメイクは加工前からギラギラしており、画面越しにも拘らず香水の臭いが漂ってきそうだ。 「へっ、そんなに盛りたいなら更に盛ってやるよ!」  波多野はそう言いながら、プロンプトに“まつ毛を伸ばす”と入力した。  30秒後、待ちに待った加工画像がパッと画面に表示される。  佐々木のまつ毛が、目からぐるんぐるんとカールするように四方八方へと伸びている。目はほぼまつ毛に隠されて、どんな表情なのか最早分からない。  もう、これはまつ毛星人としか言いようのない謎のキャラクターが出来上がり、波多野は両手で机をバンバン叩きながら大笑いした。 「こりゃ妖怪じゃねーか!何だよこのサイト、ふざけとるだろ……プププッ」  しばらく笑いが収まらずに下を向き気持ちを抑えようとしていたところで佐々木が戻って来た。 「課長ー?何してんですか?プルプル震えてますよ」  冷めた口調で話かけるも、波多野はまともに相槌を打つことができなかったため、不審に思った佐々木が彼の席に近寄る。 「課長…?、、って、ああー!!!」  佐々木は見てしまった。波多野のパソコンの画面に表示された、まつ毛星人と化した自分の写真を。
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