伸ばし伸ばされた二人

7/7
前へ
/7ページ
次へ
 自己申告する勇気も無く、数日間波多野と佐々木は神に祈るように過ごした。  結局、一度も総務や外注先から指摘を受けることなく、パンフレットが完成したとの通知が来た。 「あんなにヤバい写真だったのに、何も言ってこないってことは無事ちゃんとした画像に戻っていたんだ。そうに違いない」 「ですね、課長!きっと大丈夫なはず!」  一周回ってプラス思考の塊となった二人は、きっと大丈夫大丈夫と言いながら仕上がったパンフレットを覗き込む。  パッと見、赤とオレンジのロン毛の男や、まつ毛星人などの奇抜な人間の写真は見当たらない。 「よし!」と思った二人は、声を合わせ歓喜する。  先日まで対立していた上司と部下が、共に問題を解決することで互いに手を取り、一つの絆を作り上げた瞬間だった。 ……その時、二人はまだ気付いていなかったのだ。 “髪の毛無くす”と入力した波多野は毛一本無いつるピカ頭となり、“まつ毛を消す”と入力した佐々木は目つきの悪いすっぴん女となっていたことに。  その後、生成サイト“盛りまくり.com”は、自動保存及び書き換え不能、その他様々なエラーが続出したため、サービス終了となった。 〈おわり〉
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加