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生成AI、それはイメージしたものを具現化してくれる夢のツール。
今の時代は誰でもそのツールに触れることができ、多くの人間が自分に合った生成サイトやアプリを見つけ出し利用している。
その中の一つ、“盛りまくり.com”という名前のサイトでは、無料で人物画像を加工し、ごく自然な形で“盛る”ことができると様々な客層から注目を浴びていた。
とある中小企業に勤める新人OLの佐々木は、事務所内で一人ぶつぶつと不満を垂れている。
「あーもう、波多野課長まじむかつく!
今日もあたしに仕事を押し付けてきたよ?しかも問題起きるとすぐ責任擦り付けるし。あたし、今年入社したばかりなのに、まともに仕事教えてもくれないし。社長と専務の前ではペコペコしてるくせに!」
直属の上司である波多野に対し、強い不満を抱えている彼女は休憩時間にSNSにも愚痴を連ねる。
それでもまだ満足しないようだ。
大きく溜息をつき、何気なくパソコンのメールをチェックすると、「総務からのお知らせ」という件名のメールを見つけた。どうやら数日前に届いていたものを見落としていたらしい。
「なになに?会社案内パンフレットに掲載するために撮影した社員の個人写真を、共有フォルダに格納しました…、こちら最終確認お願いします、か」
――そういえば、前に社員一人ひとり呼ばれて個人写真を撮られたな。
びちっとスーツを整え、背景もきちんと撮影用にセットした部屋だったし、こういうのって普段の自然な仕事風景の方が良いのではないかと少し疑問に感じた記憶がある。
そんな事を思い返しながら、自部門のフォルダをクリックしメンバーの写真を開いていく。
「ぷっ、課長頑張って薄い髪の毛セットしてやんの!まじウケる!」
パッと画面に表示された波多野の写真の真面目具合に思わず笑いが込み上げるが、同時に先程仕事を押し付けられた憎しみもぶり返してきた。
「ああ、見れば見るほどむかつく!こうなったら顔写真にイタズラしてやる!」
丁度休憩時間だった上、室内には佐々木一人だったので、彼女はニヤリと笑いながら“盛りまくり.com”のページを開いた。
「課長は薄い髪を気にしていたから、逆に増やしてあげる!フッサフサになっちゃえ!」
画面に波多野の写真データを直接ドラッグし、早速プロンプトに“髪の毛伸ばす”と入力した。
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