高校生活

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「何、それ。マウント?」  寄り道のファストフードで、櫂人とのことを知っている加奈に話したら、加奈は憤慨していた。 「やだ、もう私と櫂人は関係ないもん」 「ああ、もういやだな。現代版ロミオとジュリエットじゃん」  幼馴染から淡い恋に変わりかけていた沙耶の気持ちを、親友の加奈は知っていた。  その後、絵里の言葉通り、校庭の走り高跳びのバーの前で櫂人を見かけるようになった。  それが絵里のお陰だとしても、沙耶は嬉しかった。  でももう応援には行けない。それが寂しかった。  季節は変わり、期末テストも終わりもうすぐ夏休みという頃。  加奈に呼ばれて沙耶が駅前のカフェに行くと、陸上部で同じクラスの雪奈(ゆきな)が加奈と共に待っていた。加奈はパフェを奢るからと、雪奈を呼び出したらしい。 「で、さあ、久世君と川端さんってどうなの?」  加奈が聞く。 「うん、仲いいよ」  雪奈はパフェのメロンを頬張りながら答えた。 「でも付き合ってるのかはわからない。久世君って静かだしさ、川端さんは皆にフレンドリーだからよくわからないんだよね」 「ふーん」  はっきりしない答えに加奈は不満そうだった。 「記録は? 久世君の記録はどう?」  沙耶は思い切って聞く。 「ああ、記録、伸びないって言ってたね」  跳躍班の班長の三年生が、部室でデータを見て話していたという。櫂人の中学生の時の記録が1m74だった。しかし、今はそこまで跳べていないという。 「やっぱり一年間、休んでたのが大きいなって話してたよ」 (そうなんだ……)  沙耶は顔を曇らせる。  あの記録を伸ばしてみせると誓った櫂人の、輝く笑顔を思い出して(つら)くなった。
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