すれ違い、そして

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「ほぉんとう? いくらAIのレベル上がったってアプリは完璧じゃないから! ちゃんと人間の脳で変換しないとだめなのよ」  麦野さんの甲高い声が、疲れた脳に響く。 「ちゃんと人力(じんりょく)でもしてますから」  自分でも無愛想だろうな、と思う顔で返事をした。正直、イラっとしていた。それに反応するように麦野さんの表情も鋭くなる。 「英訳は書けたってちゃんと読めなきゃ無意味なんですけど!」 「わかっ……」  と、その時、議事録をメールした病院の院長から返事が来た。  外国にメールしたのは初めてだったが、それほどタイムラグなく送信できることに驚いた。 「″お尋ねしたいことがあるからインターネット通話できないか″ だってよ」 「え」  麦野さんが何故か愉快そうにメール画面を覗き見る。こちらが返信する前に、テレワーク会議ツールの招待メールが送られてきた。
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