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秘書の鈴木さんは俺の同級生で、真面目を体で表したような人。
秘書室に内線をかけ、彼女を執務室へ呼びつける。
梅雨入り後の蒸し暑い最中、濃紺色のスーツをまとった鈴木さんはやっぱり少し野暮ったく見えた。髪をまとめただけ、まだいいけど。
「急な打ち合わせが直接入ったから、イディダスとの連絡の引き継ぎを」
「はい」
秘書の場合、俺がやりとりしていた相手の連絡を途中から引き継ぎ、メールで訪問日程を調整する業務が生じるが、秘書歴の一ヶ月の彼女はそれすらもまだスムーズにできない。
先方に失礼な、もしくは急な文調違いな内容を送らないか、先輩である倉林さんにチェックを頼むこともある。
なぜ、そんな不慣れな鈴木さんを、派遣会社から引き抜く形で秘書に雇ったのか。
誰も俺の前では口にしないが、長野の話だと、社内ではおかしな噂が一人歩きしているらしい。
″鈴木さん、神城社長の弱味を握って秘書になったんだ″ と――
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