すれ違い、そして 2 神城視点

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 弱味。  俺の弱味ってなんだろう?  自分の短所はわかっていても、弱さは他人に見せたつもりはない。  以前なら、その噂を聞いたら笑い飛ばしていただろうが、彼女と一線を超えてしまった今となってはドキリとする。  しかし、鈴木さんはけして、あの夜のことを口に出さないし、二人きりの時にも恋人ヅラなどしない。  そうなる前と態度はなんら変わらないのだ。  ――むしろ、距離ができた気がする。  この前、エレベーターの中で二人きりになった時は髪に付いていたゴミ? を取ろうとして、強く拒絶されたし……。    よっぽど、俺は、ダメだったのか?  そもそも秘書に手を出すなんてやってはいけなかった。  それなのに。あの夜。なぜ、あんなふうになってしまったのか――……。 「神城社長、お車準備できたそうです」  運転手からの連絡を受けて、鈴木さんが執務室の扉を開ける。  打ち合わせや会食にも同行して貰いたいけれど、車内で何かしら警戒されて気まずくなるのを避けるべく、一人で向かうようにしているのに。  倉林さんからは、『神城社長は鈴木さんに甘過ぎます』と言われてしまった。  そうなのか。  いや。そうじゃないんだ。  俺が俺自身に甘いんだ。 「見送りはここまででいいから。デスクに戻って」  同行させずとも駐車場まで秘書に見送らせる役員もいるが、俺は望まない。   「では、いってらっしゃいませ」  入口で扉を抑えたまま、会釈する鈴木さんに視線をやる。  少しだけ見えたうなじが、細くて色っぽくて、そして頼りなかった。 『……忘れてください』 『昨夜のこと』  これ以上、嫌われたくない。
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