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そう。俺は、昔から好きな人には好かれない。
それは家族であっても同じで、祖母や両親は、表情乏しく、ゲームやパソコンばっかり弄ってる俺よりも、快活で喜怒哀楽ハッキリした兄さんの方が一緒にいて楽しそうだった。
「大地(兄の名前)がいないと家の中静かねー……。おかずも余っちゃうし」
兄さんが修学旅行で2日いないだけで、母さんはとても淋しそうにしていた。仕事が忙しく殆ど家に居ない父さんの分も、母さんは話し相手として兄さんを必要としていたのだ。
その頃、既に自分でコードを書いて作成し
テトリスの二次創作版ゲームを完成させていた俺は、家でも自分の部屋に閉じ籠もりがちだった。
だから、母さんの体調不良なんて全然気が付かない。他人の目から見れば、どんなに成績が良く聞き分けの良い小学生でも、自己中な子供でしかなかった。
そうこうしてるうちに、母さんの病気は進行し、俺が中学校に上がる頃には長い入院生活に入っていた。
そして、一年の冬。
母さんは病院で亡くなった。
危ない、と聞かされても父さんは仕事の都合で間に合わず、兄さんも部活の遠征中で、母さんの最期を看取ったのは俺一人だった。
「……大地に、も、会いたかったわぁ……」
モルヒネも効かないほどの苦痛の中で、母さんは淋しそうに呟いて、それから意識も無くなって帰らない人となった。
この時、俺は、ゲームでもバーチャルでもいいから、脳内だけでも幸福な気持ちのまま、死なせてあげたかった、と思った。
母さんは目の前の生きた俺よりも、会えない人のことを想って死んだのだから。
十三歳で愛される自信を失った俺は、人を愛するということも良く分からないまま歳を重ねた。
「神城くんて、全然私のこと好きじゃないよね」
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