婚約破棄からの

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 窓から外を見る。  もう空は真っ暗だ。  店は大概閉まってるし今日は諦めよう。  明日出社して、他にもいるはずの秘書をお手本にするってのもアリだ。  そうだ。服で仕事をするわけじゃない。  見た目ですべてが決まるわけじゃない。(はず) 「あ、芽が出てる!」  ベランダに出ると、春に植えたピーマンが土から目を出していて、思わずニヤリとしてしまう。  プランターで育てているものには、他にさつまいもやオクラもある。  家庭菜園が趣味と言っても過言ではなく、派遣会社への履歴書にもそう記入した。  専門学校を出て、ひとり暮らしを始めてから、自分で作った野菜を調理して食べるのが楽しみになり、元彼にも良く料理を作ってあげていた。 『なつみは家庭的だよな。嫁さん向き。毎日食べたい』  そんなプロポーズをしといて、身体は私では満足していなかったってオチ。
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