雨と虹の交換日記

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夏月真夏日 雨  朝からずっとベッドで寝ている。目はパッチリ開いているけど。  今日学校に行けなかった。昨日、羽根くんと気まずく別れてしまったからだ。  昨日は日曜日だった。羽根くんと朝から映画に行った。少し話題になったSF映画。でも内容なんてちっとも頭に入ってこない、途中からずっと手を握っていたから。  羽根くんに、「ごめん」を言えないでいる。  羽根くん、ごめん。本当は羽根くんに恋してない。  本当はそう言うべきなのに、それどころか、またデートを重ねてしまっている。  羽根くんは私のこと、好きなのだろう。目を見たら、手をつないだらすぐに分かる。いとおしくってたまらないという、まなざし。それは私にも身に覚えがある。あれは、虹の文字をながめている時の、私と同じだ。  私は、虹のことが好き。  ありえないって分かっているけど、結ばれないって、知っているけど。  虹のことを考える時、私はいつも希望と絶望を少しずつ感じる。存在はあるのに、触れられないから。  羽根くんに告白されて、付き合うことになって、恋というものが何か、恋人同士ってどういうことをするのか、少しずつ分かるようになって。そしたら、その分だけ、羽根くんを虹といつも比べていることに気がついた。  羽根くんはすてきな人だ。虹みたいに軽いノリでふざけたりしない。あたたかい手で私の手を握り、ゆっくりと歩いてくれる。  でも逆に言ったら、虹は私を連れ出してくれるんだ、軽やかに、私の内側から手を伸ばして。まるで空飛ぶ傘を差し出すように。  虹は。虹なら。  つい、虹のことを思い出してしまう。ちかちか、青信号が点滅した時、虹がノートに書いてくれた、真夜中の赤信号を思い出す。って、そんな風に。  ぼんやりと考えていたら、羽根くんが、急に私の肩に手を置いた。
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