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秋月秋日 雨
今日、羽根くんと一緒に帰った。
私、羽根くんのこと、好きじゃない。
そう言った次の日、羽根くんから電話がかかってきた。学校のことを少ししゃべって、それで、
「僕のこと、きらいになったの?」
って聞かれた。
「ううん。羽根くんのこと、好きだよ」
ってそう言い出したのが自分自身で、びっくりした。あっさり告白してしまうなんて、まるで虹みたい。
でも虹じゃない。
これは、私。
「でも、恋とは違うって、気づいたんだ」
これも、私。
「だから、ごめん」
「そっか。告白してきたの、そっちのほうなのに」
羽根くんは自虐ギャグを言う時みたいな口調で言った。
「ひどいね」
「ごめん」
「分かった、いいよ、別に。でも、困ったなぁ」
「どうしたの?」
「こんなすぐ、別れたくないよ」
言ったとたん、ぐすん、と鼻をすすって、羽根くんは電話の向こうで泣き始めた。
「あーだめだ。やっぱり、泣いちゃう」
変なの、羽根くん。ぐすんぐすん泣くのを聞いて、私は感極まって逆に笑ってしまった。
「何で笑うの? 笑わないでよ」
「だって。泣くなんて思わなかったんだもん」
「ひどい。勝手に告白して、勝手に振っといて」
「だから、ごめん。ごめんね」
笑いながら、泣けてきて。でも泣いたことは、羽根くんには、内緒。
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