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春月春日 雨
目が覚めたら保健室の天井で、私はああ、終わった。と、思った。
体が重いけれど、起き上がる。カサカサ、かたいシーツの音で駆け寄ってきて、シャッとカーテンを開けたのは、保健室の先生だった。
「大丈夫?」
「あ、はい」
「お友だちとおしゃべりしてたら、急に倒れたみたいなの。吐き気は? 気分が悪いとかはない?」
「あー……まぁ、ちょっと吐き気が」
「そう。じゃあ風邪の引き始めかもしれないから、おうちに帰ったほうがいいね。待ってて、おうちの人に電話してくる」
「あっ!」
「ん?」
「……大丈夫です。親、仕事だから。ひとりで帰ります」
それに「吐き気」は嘘だから。
教室には戻りたくなかった。倒れた原因が、教室だったからだ。
さっきの会話。
「ねぇ雨ってさ、好きな子いるの?」
「え、いないよ」
「ウソウソ。いるでしょ」
「羽根くんでしょ、雨の好きな子」
「教えてよ、ねぇ。てか言えないの? 友だちなのに」
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