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私がピンチだと思ったら、私の中の「虹」が目覚める。時々気がつくと付き合う友だちが変わっていたり、怒っていた両親が急にやさしくなったりした。今まで、親には何度も殴られそうになった。でも目が覚めると何事もなかったかのように、ベッドやソファですやすやと眠っている私がいるのだ。虹がうまくやってくれたか、代わりに殴られてくれたのかもしれない。
「あれ、こんなおとなしい人だったっけ」って、友だちの一人に言われたのが、私の中のもう一人の存在に気づいたきっかけだ。そういえば急に部屋が片付いていたり、ズボンが破れていたりしたこともあった。
もとの私に戻ったな、と感じた時、大体私の目の前の人はびっくりしている。
あれ、雨どうしたの。急におとなしくなって。
さっきまで楽しそうにしてたのに。
私には、みんながっかりしているように映る。さっきまで話した雨は面白くて愉快で楽しかったのに、どこへ行ったの、って。
でも、申し訳ないけど私は虹にはなれない。おとなしくなくて、いつも楽しそうにしてる虹には。
本当は、私じゃないほうがいいのかな。虹に全部預けたほうがいいんじゃないかな、私の人生。そう思う時もある。
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