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夏月夏日 虹
気づいたら羽根くんがとなりにいて、見つめられていた。
夕暮れ。空は魔法をかけたみたいにピンク色で、もうすぐ町内放送で「愛のあいさつ」が流れる頃だ。そんな時に僕たちは、ベンチに座って見つめあっている。
え、何だ。
雨、何があった。
「……いい?」
羽根くんが尋ねてくる。声はとても低くて、小さくて、風にあっさりさらわれてしまいそう。
「いい?」って、何だ。よく分からん。
ていうか、雨のやつ、羽根くんと結局付き合うことにしたのか。手、つないだりなんかして。
羽根くんの手は少し汗ばんでいる。緊張のせいかもしれないし、少し暑いっていうだけかもしれない。
でも不思議だな。全然、いやじゃないな。
羽根くんだからかもしれない。
きっと、雨は、羽根くんのことがそんなに嫌いじゃないんだ。
いや、むしろ、好きなのかも。あんなこと言って。本当は。
僕を見つめる羽根くんの瞳は、夕暮れのピンクに染まっている。ピンクは恋にふさわしい。前髪が全然揺れないのは、整髪料でガチガチにしたからか。いいよ、かっこ悪いけどすごくいい。これって、かっこよく見せたいってこと。つまり、雨にめちゃくちゃ気に入られたいってこと。雨、愛されてるなぁ。
そっかぁ。
雨、大丈夫だよ。この人ならきっと、雨をいっぱい笑わせてくれるよ。
安心しな。
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