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はじまりは雨
『君は今、どうしている? あの時、どんな気持ちだった? 本当にごめん』
既読のつかないことは承知の上でメッセージを送信する。
情けないが、今はこれが精一杯の形だった。
これは懺悔であり、自分の気持ちを整理するには一番の方法だった。彼女の気持ちを無下にした覚の償いは、誰にも見られることもなく、ただひたすらに一方的な気持ちを書き込むという虚しい手段となっている。
好きだという気持ちを素直に伝えてくれた君に俺は何をした? 思い出すだけで、心が凍てつく。
久世覚と雨下美和は小学生の時からずっと仲のいい腐れ縁であり、中学生になる頃には、友達ともいえない遠い関係になっていた。
中学生になり、クラスのカーストで上位にいた覚は、気持ちを覚られたくなかった。好きだと思っても絶対にばれたくなかった。雨下美和はどんくさいし、勉強ができるわけでもなく、運動もできない。ぱっとしない部類のクラスのカースト下位に所属していた。
でも、幼少期からの付き合いもあり、美和のいいところはたくさん知っていた。嘘をつかない優しく真面目な性格。努力家。そんな褒めゼリフは一度だって口に出したことはない。
多分、美和を意識していたのは覚の方だ。
久しぶりに話した会話は「雨の日は嫌い」という話だったと思う。
何気に帰りが一緒になって、急な土砂降りの時、傘を持っていなかった覚に傘を貸してくれた美和。
「一緒に入っていかない? どうせ同じ方向でしょ」
それを嬉しく思う気持ちと、恥ずかしい気持ちと、他人に知られたくないという羞恥心と一抹のプライドが覚を一瞬にして襲う。小学生の頃は普通に接していたのに、いつのまにか話すだけでダメな境界線を世間が引いていたようにも思えた。
「いいよ。俺は、このまま濡れてもかまわないし」
一応断る。
「風邪をひいたら大変だよ」
にこりとした笑顔で傘を差し出された。
クラスメイトの目撃者がからかってきた。
カースト上位の覚が地味な美和と一緒にいるというのも気に食わない女子もいたのかもしれない。
というのも、覚は誰の告白も受けない鬼対応で有名な男子だった。
恋愛したくても恋愛できない男子として認知されていた。
少しばかり顔が良くて、話がうまくて愛想がいい。
それだけで充分モテていた。
覚の中に美和がいるなんてことは、微塵も見せなかったが、本当はそれが理由で彼女をつくらなかった。
その日は天気予報を裏切ったかのように急に激しい雨が降ってきた。
「雨の日ってなんだかなぁ」
覚が灰色の空に向かってつぶやく。
昇降口で偶然一緒になったのは神様がくれた偶然のようにも思えた。
「私も雨は嫌いだよ。制服は濡れるし、靴も泥だらけになるしね」
断ることもできずに、傘の中に入れてもらうが、内心どうしようもなく動揺していた。
しかしながら相合傘にドキドキしているなんて素振りは微塵も見せずに、覚は美和が濡れないように、極力自分自身の肩が濡れるように歩く。
一定の距離を保たないと心が落ち着かないというのも本音だった。
久しぶりに話す彼女は全く変わっていなかった。
美和の覚への接し方も全く変わっていないことに安堵する。
「でもさ、雨の日でいいこともあるよね」
「何?」
「こうやって覚と久しぶりに会話できたこと」
少し見上げながらの純真無垢な笑顔で言われると覚はどぎまぎしてしまう。
このしとしとと降る雨の時間が貴重なことだなんて、言えるはずはなかった。もっと一緒にいたいと覚は思う。
「じゃあ、私は覚の傘を持ってくるよ。また二人で帰ろうよ」
屈託のない笑顔だった。
「俺も、雨の日は嫌いだったけどさ。また雨が降ったらいいなって思えたよ」
「私は、覚のことが好きだから、話すきっかけをくれた雨に感謝してるんだよ」
「俺も……」
と言いかけたが、覚の言葉は詰まってしまった。
覚に片思いしている女子が目撃したのが運のつきで、あっという間に誇張された噂が広がった。
狭い教室内で女に興味がないモテる覚が冴えない女子と帰宅していることに批判と好奇心の目が向けられた。
覚は、関係を聞かれ、思ってもいないことを口にしてしまう。
「マジでウザイんだよね。雨下美和。あいつのこと、嫌いだ」
本心とは真逆なことが口からすらすら出てくる。
こうすれば美和はいじめられないだろう。
彼女を守るための嘘も方便だった。
しばらく彼女を遠ざけるために無視をした。悪気はなかった。
ある日の放課後――雨がしとしと降っていた。こんな時に、ベランダにいたら濡れてしまう。
そんな美和のことが気になってしまう。やはり、美和を一番良く見ていたのは覚だった。
美和が教室の外のベランダに行く姿を見ていた。
そんなところにいたら、地面に落ちてしまう。校内でも修理が必要とされている壊れているベランダの危険な場所で雨の中、美和が今にも飛び込みそうな様子を見て、覚は体が凍り付いた。このままでは地面に向かって体が突き刺さる。正確に言うと、飛び込もうとしたわけではないのかもしれない。なぜならば校舎内の二階のベランダの柵が壊れていて、体重をかけたらそのまま地面に落下しそうな場所だった。立ち入り禁止区域だとわかっていて、そこに立ったのだろうか。覚は美和が落ちると確信した。手を差し伸べ、声を出す。距離が遠くて間に合わない。
何もできなかった。
二階から地べたに落ちた生徒がいるということで、校舎中は騒然となった。
もちろん、ベランダの柵の修理をしていなかった学校の責任問題もあったが、いじめなどの心の問題の対応をしていなかったのではないかと学校は世間の批判にさらされた。偶然木の植え込みの上だったのと二階だったのが幸いし、一命をとりとめた。
救急車のサイレンが鳴り響き警察がやってきた。表向きは学校の事故と処理された。灰色の空は不安を更に増幅させる。しとしとと降る雨の中、覚は一人で帰宅した。何もできない自分を責めた。美和の心を殺したのは自分だと。
やはり雨は嫌いだと覚は確信した。あの日、雨が突然降らなければこんなことにはならなかったのかもしれない。
無理にでも傘に入らず帰宅していたら、傘をもってきていれば――様々なもしもの世界を考える。
入院後、美和は奇跡的に怪我することなく回復したらしい。そして、転校した。義務教育なので、これ以上何もしなくても卒業はできるが、どこかの中学に籍を置いたらしい。
退院後、新しい中学にちゃんと通学したのかどうかは情報は入ってこなかった。というのも、彼女とそれほど仲のいい生徒はこの中学にはいなかったようだ。もしかしたら、親が連絡先を変えて、この中学の生徒には教えないようにしたのかもしれない。というのも、メッセージを送っても既読にならないからだった。アイコンは残っている。ブロックをされているのかもしれない。当然だ。
あの日、近くにはいたが、殺そうとしたわけではない。彼女を助けるために近づいたと言ったほうが正解だ。
覚は中学に居場所がなくなった。皆が手のひらを反すかのように、あいつはやばい。
殺人犯だ、かかわらないほうがいいと言い始めた。
これ以上どうすることもできない覚は孤独になった。人殺しというレッテル。
それまであんなに慕っていたクラスメイトはいなくなってしまった。
みんなの本音は日々動く。気持ちも日々動く。それが辛くもあり、悲しくもあった。
覚は孤独な中で遠い知らない人ばかりの高校を受験することにした。それが現実逃避の一番の手段だった。また一から人間関係を円滑にやり直せるかは自信はない。人との距離が怖かった。
『高校で、もしまた出会えたら、俺は美和に精一杯寄り添いたい。俺にできることがあれば、言ってほしい』
クラスライン経由で交換していた連絡先は、ブロックされてしまった。唯一のつながりは消えた。美和は引っ越してしまい、今どこにいるのかもわからない。謝りたい。本当の覚は弱い人間で、それを隠すためにカースト上位のポジションに君臨していただけだ。作り上げられたコミュ力でカースト上位といわれる面々と仲良くする。好きな人に好きだとも言えない臆病者だ。
『俺はおまえのことが大好きだった。笑顔を奪ってごめん』
一日に何回も既読のつかないことが分かった上でメッセージを送る。
世界一嫌われているだろう。人間は手のひらを返したかのようにあっという間に態度を変える。あの事件以来、それは身に染みてわかった。人間不信という言葉が一番しっくりくる現象だった。
あんなに親しげだった女子たちも一線を引いたらしく、一切関わろうとしてこなかった。
あの事件で覚は加害者。雨下美和は被害者になった。
あんなに美和を嫌っていた者たちが同情をする。
自殺未遂事件と世間は認識した。
追いやった覚は加害者だ。
学校って行く意味あるのかな?
受験なんてする意味あるのかな?
合格したら、また学校生活が始まって、高校という檻でカースト制度が成立する。そこには新たないじめの種が埋まっているかもしれない。加害者になることもあれば被害者になることもある。
高校に行けば何か変わるだろうか?
自分自身、周囲の変化に期待しつつ、受験勉強をしたが、本当に楽しいことが待っているとも思えなかった。どこか現実に期待できないでいた。
いつかどこかで雨下美和に出会うことがあったら謝りたい。
そして、本当はずっと好きだったことを伝えたかった。
どんなに嫌われていたとしても、世界の終わりにいる覚にとってはそれだけが唯一生きる意味だった。世界が終わってほしい。それが切なるねがいだった。自分自身の人生が終わったほうがどんなに楽だろうか。あんな針の筵のような学校に行くことは、毎日が吐き気がするほど辛いことだった。
たまにはサボってしまおうと中学へは登校せずに河原に向かう。人気の多い街中にいけば、補導されてしまう。程よく田舎の人通りの少ない河川敷で自分と向き合う。あの時、告白を正直に受け入れていたら――あんなことにはらなかなった。素直に好きだと伝えればよかった。もう、永遠に伝える手段がみつからない。
きっと来年の四月、高校生という枠組みに入れば、楽しい生活が待っているのだろうか? 今よりは少しはましになるだろうか? でも、自分をさらけ出すことがとてもとても怖くなっていた。もういちど美和に会いたい。ずっと幼少期から一緒に過ごした仲。ずっと途切れることはないと勘違いしていた。関係なんて学校や住む場所やSNS次第で簡単に途切れるものだ。それを痛感する。甘く見ていたことを悔やむ。大切な大切な関係。他の人で埋めることはできないと確信していた。陽キャと言われるグループに所属することで、一群と言われることで、自分を高く評価させていた。それは弱みを見せない隠れ蓑だったように思う。彼女の少しさびし気で憂いをおびた笑顔。黒いストレートな髪の毛。全てが愛しいと思う。
中学には行かなくてもいいから高校受験だけは何とかしてほしいとだけ言われていた。もう、あんな居心地の悪い場所にいたくはない。それよりも、勉強をしようと自宅でひたすら受験用ワークや過去問題に取り組んだ。未来が明るいかどうかも不明な状態で、覚はただ問題と向き合うことで現実逃避していたのかもしれない。
知り合いに会いませんように。なるべく遠くの高校へ入れますように。
誰とでもなく勝手に祈る。
届かないメッセージを送る。既読はつかない。
雨が好きになったあの日のせいで、俺も美和も人生が変わってしまった。
『やっぱり雨が嫌いだ』
SNSで美和に勝手に一方的に話しかけるのが当たり前となっていた。
迷惑で気持ち悪いと思われるだろう。これは一種の自己満足だ。
メッセージだからこそ素直に言える。
『大好きだった』
『ちゃんと気持ちを伝えたい』
これは、謝罪を含めて、好きだという気持ちも全部含めて伝えたいという意味だ。
「届かないメッセージだけど、勝手に期待して送信してる。アイコンがあるってことはまだ解約してないのかもしれない」
毎日ただひたすらメッセージを送る。
届くはずのない人宛てに。
合格発表の日、番号を確認する。
桜高校に合格した。
高校に点数開示を見るために来た時、よく知っている髪の毛に反応した。後ろ姿だったけれれど、すぐに分かった。雨下美和だ。彼女は一人で来ており、体に後遺症はないようで、普通に歩いていた。この近くに引っ越したのだろうか。なんだかストーカーみたいだけれど、ずっと手を伸ばしても届かない人に届いた感じがして、声をかけた。もしかしたら、これを逃したら一生話すことはないかもしれない。
「美和」
「あのときは、ごめん」
それを言うと同時に美和は逃げてしまった。
嫌われているからかもしれないけれど、懸命に走って追いかけた。
ちゃんと想いを伝えたい。絶対に謝罪したいという気持ちが一番だった。
「待って!! ごめん!! ずっと謝りたかったんだ」
自然と美和の肩をつかんでいた覚。失礼かと思ったが、また逃げてしまうのではないかという不安が襲ったのだった。
「私こそ、何も言わず転校してごめん」
「ずっとライン送ってたんだ。でも、ブロックされたから、メッセージは読んでないだろ?」
「親に中学の人全員と連絡を絶つように言われたの。しばらくはそのまま使っていたんだけれど、最近解約したんだ。アカウントは別に新しく取得してる」
「俺、本当はあの時、雨の中で一緒に帰ることができて嬉しかったんだ。好きだと言われて嬉しかったのに、素直になれなかった」
意外な顔をする美和。
「私のことを忘れないでいてくれただけでうれしいよ」
何も責めない。彼女の優しさは変わらない。
「あれは、事故だったの。飛び降りようなんて思ってなかった。ただ、雨は嫌いじゃないから誰もいないベランダで佇んでいたの。でも、あそこの柵が壊れていて、体重を掛けたら二階から転落。馬鹿だよね」
「でも、クラスで居心地を悪くしたのは俺のせいだ」
「違うよ。覚はいじめられないようにあえて距離を取って私をかばってくれてたよね。優しい人だってわかってるよ」
「でも、俺は嘘だとしても、美和の悪口を言っている。許してもらえなくてもいいから、ずっと謝りたいと思っていた」
「そうだったんだね。覚も桜高校に入学するの?」
「うん。中学の奴が受けない遠い高校を選んだんだ」
「覚も色々あったのかもしれないね」
「俺、世界が終わってもいいかもって思いながら半年過ごした。美和もそんな世界でずっと生きていたんじゃないかって改めて気づいたんだ。本当の友達ってなんだろうな。美羽は事故の後遺症はないのか?」
「検査はひととおり受けたけど、後遺症は特にないよ」
「後遺症がないなら何よりだ。あのさ、新しい連絡先、教えてほしい」
「世界が終わってしまえばいいって思っていた時期は投げやりだったと思う。でも、美和と高校生活を通してつながれたら俺は幸せだ。今度償いで何か飯おごりたいって思う。それじゃ足りないと思うから、何か欲しいものがあったら言ってよ」
「高校に入って新しいアカウントにしたから、以前のひまわりのアカウントは消されてると思うよ。新しいアカウントで交換しようか」
「俺、ずっと謝りたかった。冷たくしたほうが美和のためだと思った。でも、違った。美和を追い込んでいったのは俺だ」
「私もずっと謝りたかった。私がいなくなったら覚が居場所がなくなるのはわかっていた。バッシングを受けることもわかっていた」
「美和が変わっていなくてよかった」
連絡先交換をするためにQRコードを出す。
美和がそれを読み込む。
ピコンと音が鳴り、ネットという見えない世界で友達として繋がる。
虹の写真のアイコンが出てきた。
「これ、本物の虹?」
「うん。雨上がりの虹をスマホで撮ったんだよ。偶然が重ならないとなかなか撮れないから貴重だよね」
「転校した後、どうしてた?」
「普通に学校に行って、普通に受験生してたよ」
普通という言葉は安心する。
「これから、どうでもいいメッセージ送ってもいいかな?」
「いいよ」
春のはじまりを感じる空気を吸いながら、かなり緊張して言葉を選ぶ。
「実際、美和も世界の終わりに近い場所にいたんだろ?」
美和はその言葉に否定はしなかった。
「この河原は世界の終わりに一番近い場所だったと思う」
美和はうなずく。
「でも、これからはこの場所が世界の始まりだと思うようにするよ」
「どういう意味?」
「再会して高校に入学して新しい世界が始まる。この場所から俺たちは変われるかもしれない」
「変われないかもしれないよ」
否定的な美和。
「そんなのわかんないよ。でも、どこかでみんなどうせ裏表があって本当に信じられないっていうのは身をもって感じてる。でも、高校生活への期待がゼロではないんだよな」
「私、自殺するつもりじゃなかったの。事故にあっただけなのに。世間は自殺未遂の少女として色眼鏡で見るんだよね」
「俺は、自殺未遂に追い込んだ殺人犯だって全生徒に嫌われてしまった」
「まさかフェンスが壊れているとは知らなかったの」
「あそこが壊れているっていうのは有名な話だろ。立ち入り禁止って書いてあったし。雨なら滑りやすいし危険だ」
「ベランダは屋根があるから、雨でも大丈夫だと思ったの。雨を感じたかったの。立ち入り禁止の場所なら誰も来ないかなって。一人になりたくてさ」
「相変わらず天然なんだな。でも、ケガひとつなかったのは奇跡的だったと思うよ。距離があって助けられなかったことは、申し訳なかったと思う」
「あの日、私と覚をつなげてくれた雨に触れていたかったのかもしれない。だから、雨が好きになったの。学校に行けない時、雨の日はずっと窓の外を眺めていたの」
「最初は謝罪の気持ちのほうが大きかったんだけど、ぶつける場所はネットの世界しかなかったんだ。もう連絡する手段はなかった。俺たちのつながりなんてブロックされたらおしまいだからな。どうせ既読がつかないならば、好きだとか愛してるとか気持ちを言葉にして入力してた。既読つかないからって毎日たくさん送信するなんて、気持ち悪いよな」
照れながらもちらりと美和を見る。
「ありがとう。重いなんて思ってないよ。嬉しいよ」
「世界が終わってもいいって思っていたのに、時間が経つとそんなこと思えなくなっていたりするもんだな」
「時間が解決してくれることもあるんだね」
「今、見えている世界は永遠じゃないと思うの。大学や専門学校に進学するかもしれないし、就職するかもしれない。私たちを取り巻く世界も人もきっとずっと変化するんだと思う」
「今、もし、暗い世界にいたとしても、それが永遠じゃないってことなんだな」
お互いに自然と手をつなぐ。
今、覚がいて美和がいる。
今、心と心がつながった。
手と手がつながった。
虹を見ながら、二人は足元の水たまりをよけながら歩く。
その様子は傍からみたら、とても楽しそうで、水たまりすら楽しんでいる様子だ。
雨上がりの水たまりも含めて雨が好きになっていたのかもしれない。
「あの時終わらせていたら、今はないからな」
つないだ手を見つめる。
「こんなに人を好きになれると思わなかった」
「私もだよ」
「今日、虹が俺たちの想い出に追加された」
「虹のアイコンに愛の鬼メッセージ待ってるから」
世界を終わらせることは簡単なことなのかもしれない。
終わらせないことのほうが難しいのかもしれない。
少し待てば世界が変わって見えるかもしれない。
現実世界で空を見上げると虹が見えるかもしれない。
そんな期待を雨上がりに持つような気持ちで生きることがいつの時代も大事なんだと思う。
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