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「ただいま」
「おかえり」
玄関までタカが出迎えに来た。リビングに入るとローテーブルに好物のシュークリームが置いてあった。もう、これは絶対におかしい。お願いを聞いてはいけないと頭で警鐘が鳴る。
座るように促され、カーペットの上であぐらを描く。タカは俺の後ろで足を投げ出し、ピッタリと背中に張り付いて腹の前で指を組んだ。
「マサ、抱かせて」
…………は? 今、抱かせてって言ったか? 聞き間違えであってくれ! そうでなければタカとの生活も今日限りでおさらばだ。
「あのさ、もう一回言ってくれるか? よく聞き取れなかった」
「だから、マサを抱かせろ!」
よく聞こえるようにか、耳元で大声を出される。
聞き間違いじゃなかった。
「タカが俺の事好きなんて知らなかったよ。でも、ごめん。それは無理!」
立ちあがろうとするが、抱きしめられている腕に力を込められて抜け出せない。
「別に俺、マサの事そういう意味では好きじゃねーよ」
「ん? じゃあ何で抱かせろ?」
「俺はさ、自分の顔が大好きなんだよ。だから、俺を抱きたいんだ。でも無理だろ? だったら同じ顔がいるんだから、マサを抱けばいーじゃん! って思ったんだよ。だから、俺の代わりに俺に抱かれて!」
ナルシスト拗らせすぎて、意味がわからない事を言い出す。初めて双子である事を呪った。
「いや、無理だって。俺、やった事ないし」
「大丈夫大丈夫、全部俺に任せればいいから。絶対に気持ちよくしてやるから!」
えっ? 何でタカはこんなに自信満々なんだ? 地元にいた時は童貞だったはずだ。こっちに出てきてそんなに経験値得たのか? 俺の知らない間に。
「タカって慣れてるの?」
「慣れてるわけねーだろ。だって俺は俺以外抱きたくねーし」
「自信満々に任せろとか気持ちよくしてやるって言うから慣れてるのかと思うだろ」
「イメトレはばっちりだ」
「うるせーよ、童貞!」
「今日で元童貞になってやるわ! マサは今日で非処女だからな!」
「だれが非処女になるか!」
叫ぶとタカの手が服の中に侵入した。片手は未だに身体を拘束している。
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