11

1/1
前へ
/12ページ
次へ

11

 僕は再び地下鉄を乗り継いで、バイト先に向かった。そして、店長に報告した。だけど、僕は中津川君の部屋で見たことを店長に伝えなかった。伝えたところで、信じて貰えそうになかったからだ。  僕は中津川君のアパートに行ったけど、留守で会えなかったと店長に伝え、バイト先を後にした。  結局、中津川君がどうなってしまったのか分からないままだった。ただ、あの大量の髪の毛が残されていた部屋は異常だ。中津川君は、ただ事ではない何かに巻き込まれてしまったのではないかと思えてならなかった。  そして、それは、あの肝試しに行った髪の毛が伸びる人形が置いてある寺と、無関係ではないような気がした。中津川君が肝試しに行った夜に見たもの。それは一体何だったのだろうか。ひょっとして、彼はそのものから、呪いのようなものを受けてしまったのではないだろうか。  今更ながら僕は怖くなって、今までの経緯を彼女に電話で話した。 「そんなことある訳ないじゃない」  そう言って彼女は笑うと、まともに取り合ってくれなかった。 「それより今日行く店、決まった?いい加減な店だと許さないからね」    そう言うと、彼女は一方的に電話を切ってしまった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加