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「お姉ちゃん、変な子とお付き合いなんて、してないわよね?ママ今日スーパーでーー」
学校が同じ誰かの親から、スーパーで噂話を仕入れてきた母が、いきなり話し始めた。
「ヤクザなんでしょ?その大崎くんって」
「大崎は違う」
大崎は、まだ中学生だよ。
ヤクザなワケないじゃん。
ちゃんと考えれば分かる事なのに、色眼鏡ってのは凄い力があるんだと知った。
「なんの話だ?」
食卓に父親が加わり、本日の夕飯が始まった。
「お姉ちゃんがねーー」
母親は、さきほどと同じ話を父親に聞かせた。
「そんな人間が普通の学校に通うなんてな…けど”アンナちゃん”はしっかりしてるから大丈夫だろう」
「まぁ、そうね。お姉ちゃんはしっかりしてるものね」
「ヤクザってなぁに?」
「んー?ユズハは、一生知らなくていい団体名称だよ」
この食卓に居る父親は、私の本当の父親では無い。
私が5歳の頃に母が再婚して、父親になっただけの人。
所謂エリートと呼ばれる類に属する父親は、偏見に満ち溢れている。
そんな父親と、母の間に産まれた妹のユズハ。
愛嬌があって人懐こくて、私とは正反対の、感情豊かな可愛い女の子。
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