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そんな中、帰国したシュウが病院に到着した。
「シグレっ!お前っ…」
俺を殴らんばかりの勢いで、胸ぐらを掴んだシュウは、すぐに俺を離し、目を閉じ気を落ち着かせるようにしてから、口を開き。
「サナは?」
「中にいる」
俺の言葉を待って、深呼吸をしてから、中に入っていった。
中からは、サナの喜ぶ声が聞こえてくる。
そんなサナに、シュウも優しく答え、笑い声が病室から漏れてきた。
「生きてて、目覚めただけでも、良しとしなきゃいけねぇんだよな」
タクマがそう言って、初めて病院から出て行った。
確かに、サナが手術中の時は、せめて命だけは…と思っていた。
そう、今タクマが言ったように。
サナは、俺の事をシュウから紹介され「シグレさん」と、呼ぶようになった。
いつか、また”シーくん”と、呼んでくれる日は、やってくるんだろうか。
”タクマ”、”コー”、”アオ”、そうやって、笑顔で呼ぶ日は、いつか戻ってくるだろうか。
そんな他力本願クソくらえだ。俺が…俺達が、サナの記憶が戻るきっかけを作ればいい、これから傍にいて、思い出す手助けをしてやろう。
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