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サナが眠ってる間に、トモのところに子供が産まれた。
産まれたら、すぐに抱っこしたいと言っていたサナは、そのことも覚えていない。
「これで出産祝い買って、送ってくんねぇか」
「誰の?」
「一ノ瀬 智、っつうか、その嫁がサナの親友なんだよ。女の子を産んだんだ」
「…分かった。サナさんの記憶は?」
「まだ」
「あのね、調べたんだけど。嗅覚って記憶に直結してるんだって、だからサナさんが一番好きだった匂いを」
俺は、雪村の言葉を最後まで聞かずに、叫んでた。
「タクマっ」
「は?まだ話してる途中なんだけどっ」
「違ぇ、タクマの匂い、サナが一番落ち着くって言ってんだ」
「神代の匂いって、香水とか?だったら同じ物買ってサナさんの傍に置いておけば、いいんじゃない?」
そんな、まどろこっしいもんじゃなく、タクマが抱きしめればいいだけだろ。
サナはタクマの胸に、顔を埋めて眠ってたんだから。
それをすれば、一発で記憶なんて戻るんじゃね?
一路の光を見つけた気がした。
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