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サナが退院してから2週間ほど経ち、俺はシュウから”話がある”と連絡を受けた。
どうせだったら、と思いシュウには<RAY>に来てもらうことにした。
「単刀直入に言う、俺はサナと結婚して、一旦ロンドンへ戻る」
「は?何言ってんだよっ、サナはっ」
「サナも承知してる、というよりサナからの申し出だ」
・・・一瞬、シュウが何を言ってるのか理解できなかった。
だってサナは忘れてるだけで、タクマと結婚する予定だったんだ、中止じゃねぇ延期なんだ。
シュウと結婚なんてしちまったら、もうタクマとは結婚できねぇじゃんか。
「サナが愛してるのはタクマだ。サナは俺にタクマと結婚したいって、タクマの子供が産みたいって言ったんだ!あんなサナの顔、初めて見たんだよっ!」
あの笑顔は、今でも、すぐに思い出せる。
あんな幸せ一杯の、とびきり綺麗な笑顔、忘れられるワケがねぇ。
「じゃあシグレは、サナが誰も知ってる人間が居ないここで、暮らしていった方がいいと思うのか?」
「思い出す可能性は大いにあるだろ、それにサナの記憶が戻った時、サナが苦しむのは目に見えてる、そうなればシュウだって苦しむ事になるんだぞ」
「だろうな、でも俺は縋ってきたサナを、突き放すなんて選択肢は無い、それに俺はサナの事を、愛してるからな」
シュウにしたら、またとないチャンスなのかもしれない。
けど、その結婚に、幸せな未来はあんのか?
誰も幸せになんねぇのに、する意味あんのかよ。
本当に用件だけ言って、シュウは帰っていった。
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