Chap.8

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「社長も鬼軍曹も、外まで聞こえてますよ?」 ちょうど昼休憩だったらしく、秘書達も席を外していて、聞いてたのは草野だけみたいだ。 草野は一応、常識があるらしく、他の社員がいる時は、ちゃんと俺の事を副社長と呼ぶ。 いや、いなくて副社長じゃなきゃ、ダメなんだけど。 「社長、サナちゃんと別れるんやったら、俺にサナちゃん、くださいよ。俺なら、まぁくんも、リーたんも懐いてますし」 「会社で、そういう話をするな」 「すんませんでした、サナちゃんも見る目ないなぁ」 軽い感じで言いながら、草野は社長室から出て行った。 草野 利一、初期組の中で一番、仕事のできる奴で、人の心を読むのが上手い。 東京へ拠点を移す事が決まった時、真っ先に俺は草野に打診した。 ”東京に行けるか?”そう言う俺の問いに、草野は即答だった。 仕事の事を考えても、草野を大阪に残す、という選択肢なんか俺には無かった。 それにサナや子供達とも、すぐに打ち解け、安心して任せられる人間だ。 さっきの草野は、言い方こそ軽いノリだったが、目つきは真剣だった。 どっちだ?本当にサナの事が好きなのか。 それとも、サナと子供達の事を考えて、俺と同じように、シュウに腹を立てただけか…。 あいつは、読むのが難しい。 タクマなら、見抜けるんだろうか……。
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