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「社長も鬼軍曹も、外まで聞こえてますよ?」
ちょうど昼休憩だったらしく、秘書達も席を外していて、聞いてたのは草野だけみたいだ。
草野は一応、常識があるらしく、他の社員がいる時は、ちゃんと俺の事を副社長と呼ぶ。
いや、いなくて副社長じゃなきゃ、ダメなんだけど。
「社長、サナちゃんと別れるんやったら、俺にサナちゃん、くださいよ。俺なら、まぁくんも、リーたんも懐いてますし」
「会社で、そういう話をするな」
「すんませんでした、サナちゃんも見る目ないなぁ」
軽い感じで言いながら、草野は社長室から出て行った。
草野 利一、初期組の中で一番、仕事のできる奴で、人の心を読むのが上手い。
東京へ拠点を移す事が決まった時、真っ先に俺は草野に打診した。
”東京に行けるか?”そう言う俺の問いに、草野は即答だった。
仕事の事を考えても、草野を大阪に残す、という選択肢なんか俺には無かった。
それにサナや子供達とも、すぐに打ち解け、安心して任せられる人間だ。
さっきの草野は、言い方こそ軽いノリだったが、目つきは真剣だった。
どっちだ?本当にサナの事が好きなのか。
それとも、サナと子供達の事を考えて、俺と同じように、シュウに腹を立てただけか…。
あいつは、読むのが難しい。
タクマなら、見抜けるんだろうか……。
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