Chap.1

18/26
前へ
/250ページ
次へ
俺が何で、こんな事を身につけたかったのか。 それは、俺の家だ。 修行という名のリンチを、俺は家に来てから受けていた。 俺の親父は、関東で大きなヤクザの組長をしている。 そこは代々継がれてきた家。 親父には正妻がいて息子もいる。 俺は所謂、愛人の子供。 俺の存在が面白くない人間は、ごまんといる。 ただ、いくら外子だろうと、組長の息子である俺に、無闇矢鱈に手をあげるわけにはいかない。 そこで考えたのが、修行だの特訓だのという事だった。 ただし、中身はただのリンチ。 大の大人が複数でかかってきて、暴力を振るう。 しかも皆、ヤクザの組員だ。 それなりの、ケンカの経験をしてきた人間達。 ケンカなんかと無縁の生活を送ってた俺には、防御の取り方だって分からず、ただ殴られ蹴られるだけだった。 俺は組とは関係なく生きていく。 これは、引き取られた日に親父に、はっきり言った言葉だ。 親父も、この事は納得していた。 けど組員には、そんな事は関係ない。 お家騒動の元になる可能性がある人間は、排除したいのだろう。 俺にだって、男としてのプライドってもんがある。 やられっぱなしなんて御免だ。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加