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老婆だと思って油断した私も悪いのよ。
美味しそうなリンゴだったし。
でも、まさか老婆が継母でリンゴに呪いがかかっているだなんて思わないじゃない。いくら私の美貌が許せないからって、ここまでする?
……あ、するわ。元々殺されそうになって森にきたんだ、私。
むしろ今回、眠りに落ちるだけですんだのは運がよかったのかな。それを目覚めさせてくれた王子は、確かに恩人かもしれない。
だとしてもよ? なんで結婚しなくちゃいけないのよ。だいたい助けてくれなんて頼んでないし。
どうせ助けてくれるなら……
「姫様。大丈夫ですか?」
ベッドでふさぎ込む私に、侍女だといわれた女性が優しく声をかけてくれる。
「……ありがとう。でも私、姫じゃないわ。森で暮らしているただの娘よ」
「ですが、貴女様は王子の婚約者……」
「それ‼ 絶対に認めないから。婚約発表なんて冗談じゃない」
「でも……」
「でももなにもないの。私は絶対に逃げるわよ。こんな窮屈な世界まっぴらだわ。それになんで好きでもない男と結婚しなくちゃいけないよ」
「──命の恩人に対して随分だな」
低い声に目を向ければ、部屋の入口に王子が立っていた。
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