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EPISODE2 Ready go未希先街/Welcome to 未希先街
電車を乗り継いで凡そ一時間、窓に映る景色が絶え間なく変わっていく。
どこまでも続くような広い田んぼやビニールシートに覆われた果実園もあれば、十分ほどで家が立ち並ぶ線路沿いの道路が見えてくる。
そんな光景を繰り返して目的地に着くのを待つ。
その隣で伊吹はスマホとにらめっこしながらあーでもないこーでもないとブツブツ呟いている。
きっと次の小説のネタでも考えてるのかもしれない。
対照的に東雲は落ち着いている、窓から見える景色に興味はあっても少し眺めていたらそのまま視線を戻してる。
僕はと言えばやっぱり例の動画が気になっていた。
(死者が蘇るなんて、本当にそんな事有り得るのかな?)
去年の夏から伊吹や東雲と一緒に霊に関する事件や現象には巻き込まれてきた。
だけど大体の場合、それは伊吹の言葉を借りるなら「現世に迷い込んだ、或いは帰れなくなった霊」によるものだ。
だから完全な死者蘇生は有り得ないとの事らしい。
何故なら仮に蘇生などがあって体だけを構築しても内面を構築する魂が無いからとのこと。
この魂に焼き付いた記憶や経験、思考がいわゆる霊になるらしい。
もっとも、それが見えてない僕には伊吹の経験や推測でしか語ることは出来ないけど。
だけどあの動画の人は「死者が蘇る」とはっきり言っていた。
それを確かにするのが今回の目的だ。
……まぁ、未希先街に興味があるのも否定はしないけど。
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