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駅から出て見えた景色は車内から見えたビルがまだ小さく見えるほど大きなビルが幾つも立ち並んでいた。
まさにイメージするような都会、ビル街がここにあると言わんばかりに高く積まれた建物はバベルの塔のように見えた。
「ここが未希先街……」
「でっけぇ、何もかもサイズ感違ぇな」
「とりあえず何枚か撮っとこ、記念になるし」
東雲はビルと街路樹が立ち並ぶ道路や人が流れていく歩道、そして複数のビルを持ってきたカメラに収めてシャッターを切っている。
写真部の東雲にはお土産以外にも活動の報告や純粋に感動したからというのもあるのかもしれない。
元から彼女が写真を撮るのは「消えていく風景を収めて起きたいから」らしい。
何時またここに来れるか分からないし、そういう意味でも東雲にとっては貴重なのだろう。
「なぁ、それよりも腹減らねぇか?」
「嘘でしょ?乗る前におにぎり三つも食べといて?」
「逆効果だったぜ、腹減って仕方ねぇ」
東雲が写真を撮り終えてから伊吹はそうぼやき始めた。
確かにご飯を食べる前に軽く食べると逆にお腹が減るというのは聞いたことあるけど覚えてる限りだとおにぎり一つ位が適正だったような。
伊吹ってもしかしてフードファイターの素質でもあるのかな?
「そういうシノはどうなんだよ」
「私はまだ平気だし、そう簡単にはーーー」
そこまで言って東雲の方からお腹の音が鳴った。
電車で一時間の長旅に加えて、乗る前も何も食べてなかったのだからそうなるのは仕方ないかもしれないけどなんとも間の悪い。
「なによ」
「いえ別になんでも?」
「言いたいことがあるならはっきり言えば?」
「シノって意外と可愛らしい腹の鳴り方するんだな」
「分かった、シメる」
「まぁまぁ二人とも、どうどう」
本気で手が出そうなところで何とか割って入る。
人が多いんだからここで乱闘とか始めないで欲しい。
仕方なく手元のスマホで近くのファミレスを探すと候補が多く出る。
「それならここにしない?ディアーダってお店があるらしいんだけど」
「お、クチコミも良さげだな。ボリューム志向ねぇ」
「二人がいいなら私もそうするよ」
「おっけー、じゃあ行こうか」
行先も決まったところで僕たちは未希先街の駅を離れてレストランのディアーダへ向かうのだった。
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