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「もしよかったら未希先第一高校を調べてみるのもいいと思いますよ、さすがに顔は分からないので生徒さんの名前までは分からなかったですけど」
「いえそれだけでも十分です、ありがとうございます」
伊吹は頭を下げてお礼を言う、さすがに僕たちの目的までは話せないけど、それでも頼りになる情報が増えたのは嬉しい事だった。
「あの、どうしてここまで話してくれたんですか?」
そんな中で口火を切ったのは東雲だった。
彼女は過去の経験で大人に多少の不信の念がある。
だからか伊吹や僕が話しているときも警戒をしていたのか一切話そうとはしなかった。
そして東雲も多分それを自覚しているから何も言わないでいたのだろう。
それを聞いて藍野さんはニッコリと笑った。
「それはですね、私がアンドロイドだからですよ」
そう前置きをしてから、藍野さんはしっかりと東雲に目を合わせた。
「私は誰かの役に立つために生まれてきたんです、きっと他のアンドロイドだってそうです。私が出来る範囲で貴方達に何かをすることで、貴方達が喜んでもらえるならそれが私にとっての報酬なんですよ」
「貴方には何の得も無いのにですか?」
「得ならあります、今貴方達の役に立てた。それじゃ足りませんか?」
「……いえ、すみません。失礼な事を言って」
東雲はバツが悪そうに引き下がる。
それを見て藍野さんは何か思うように話を続けた。
「ふむ、東雲さんは何かをしてもらったなら対価を払わないとと思ってますね。ですがそれはそれでいいと思いますよ」
「それでいい、ですか?」
「はい、とても現実的です。そしてそれは自分の大事な人を守るために使われるものです。それを大事にしてくださいね」
「あ、ありがとうございます……」
その会話の隣で僕はただ驚くしかなかった。
藍野さんは東雲が抱えていた何かの正体を当てて、それを解きほぐした。
その手腕と優しさにただ驚くしか出来なかった。
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