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「っと、そろそろ私も時間ですね。それじゃ蓮さん、伊吹くん、東雲さん、縁があったらまた会いましょう」
そう言うと手を振りながら藍野さんは席を立ってその場を後にした。
残された僕たちはその後を眺めながら三人でもう一度顔を合わせた。
「伊吹、次に行く場所は決まったね」
「おぉ、藍野さんがくれた情報が本当なら俺達が行くべきは未希先第一高校だな」
「そこにあの動画をアップした人がいるんだよね」
「あぁ、だが今はまだ授業中の可能性がある。だからその前に仮拠点に行かないか?」
デイリーマンションの事かもしれない、伊吹はこういうところでやたらと格好付けたがる所があるから。
とはいえその案には僕も賛成だ、一旦荷物を降ろしてから学校内に入る方法を考えてもいいかも知れない。
「……」
「東雲?どうかした?」
「ううん、おばさんみたいな大人って本当にいるんだなって思ってさ」
「うん、きっとまだいるよ」
東雲の家庭事情も大分複雑だ。
本来の親から姉妹で逃げて、千種おばさんのところで匿って貰った。
その経験から東雲は大人に対して強い不信感を持っている。
ともすればそれは千種おばさん以外に信じられる大人なんて居ないと思う程に。
だからそう言う意味では藍野さんの優しさや相手を受け入れる在り方は東雲に何かしらの変化を与えたのかもしれない。
「だから東雲、僕たちもやるべきことをやろう」
「そうだね、とりあえずその仮拠点まで行こう」
ようやく東雲も元通りになったところで僕たちもお会計をしようとして、テーブルの上の会計票が無い事に気がついた。
後で店員さんに確認したら藍野さんが払っていたらしい。
なんというか、優しすぎる人だあの人も。
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