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その言葉に思わず喉が詰まる。
事故で亡くなったお孫さん、その喪失がおばあちゃんにどれほど悲しい思いをさせるのか、思わず羽菜さんの事を思い出す。
大事な人を喪った痛みと喪失感はずっと残された人を苛み続ける。
それを羽菜さんや過去の経験を通じて知ってるからこそ、放っておけなくなりました。
「そうですか、それは辛いですよね」
「あぁ辛い、何故あの子が死ななければならなかったのか……」
「おばあちゃん、お家まで一緒に帰りましょうか?」
「いや大丈夫じゃ、それに悲しい事ばかりでもないしの」
「何かあるんですか?」
「もうすぐとある老人ホームに行くんじゃよ、娘がおすすめしてくれた場所でな、そこで孫に会えるかもしれないんじゃ」
「え?」
思わず自分の耳を疑ってしまう。
そんな馬鹿な、亡くなった人間は蘇りませんしそこにお孫さんがいるはずもありません。
となると娘さんが似たような人を見つけたという事でしょうか?
ともあれそれを指摘してしまえばおばあちゃんをさらに悲しませることになります。
「そうなんですか、ならその時まで頑張らないとですね」
「そうじゃな、ありがとうよ。名前は?」
「藍野です、ところでおばあちゃん、その老人ホームの名前は分かりますか?」
「ううん?確か黄昏会館だったかの?」
黄昏会館ですか、後でマスターに調べて貰う必要がありますね。
「それじゃ私はここで、また会いましょうねおばあちゃん」
「それじゃ元気での藍野さん」
それだけかわしてから私もまた別のポイントを巡る。
おばあちゃんの言ってることは気になりますけど、それでも今は自分の仕事が優先です。
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