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それから渡守さんは職員室に呼ばれて、私はクラス委員の仕事を終わらせてから先に帰った。
正直今はどんな顔をして会えばいいのか分からない。
部屋に戻っても何かを読もうという気も起きない、こんなのは初めてだ。
(……なにか体調でも悪かったのかな)
テスト前や受験期に体を壊す人が多いのは知ってたしもしかしたら、なんて考えを一蹴して振り払う。
日程は知っていたし、その日に向けて万全は期してきた。
体調だって整えてきたつもりだ、急に崩れることはありえないしそんな素振りも無かった。
(……私達と勉強するの、嫌だったのかな。それとも私が思いあがっていただけなのかな)
頭の中を占めているのは渡守さんのテストの低さじゃなく、共に過ごした時間を否定されたんじゃないかと言う寂しさ。
一緒だから頑張れた、私にとっても初めて誰かと勉強する日々だった。
でもあんな結果になったのなら、楽しかったのは私だけだったのかと言いたくもなる。
そんな風に答えのない問題を部屋の隅で考えていたら、いつの間にか日は暮れていたようで、玄関が開く音が聞こえた。
「ただいまー、テスト期間お疲れ様です。ごほーびに甘いものでも食べます?」
謎に上機嫌な先生だった。
既に手にはバケツサイズの容器が握られて、きっと中身は疲れを取る甘いものなんだとは推測できた。
でも今はそれを欲しいとは言えなかった。
「今はいい、後で貰うよ」
「およ?圭さん元気ないですね、もしや何か補習教科があったとか?」
「ううん、私は平気。先生のおかげで全教科は平均点越えられたよ」
「ならどうしてですか?そんなに落ち込まなくても」
「……渡守さん、どの教科もダメだったみたい」
「な、なーんーでーすーと〜〜〜〜〜〜!!」
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