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「な、なにを……」
「今日先生と調べたの。渡守さんのテストの結果が変だったし、それで思ったんだ。渡守さんは悪く思われるためにああしたんじゃないかって」
「本当にそう思ってんのかよ、あれがアタシの実力さ。今までのは、そうお前のをカンニングしてたんだよ。そうとも知らずに」
そうまで口にしたところで、アイツの手がアタシの頬に触れ、慈しむような動きでアタシに目を合わせてくる。
「もう辞めなよ、そんな嘘つくのらしくないよ……」
「なにが、らしくねぇってんだよ……」
「渡守さん、本当は真面目だし今回のだって何か理由があったんだよね?」
「んな訳……」
「じゃあ今までのも全部嘘?今日まで頑張って、何度も嬉しくなったのも嘘なの?」
「それは……」
否定できない、否定しなきゃならないのにそれが出来ない。
その度にコイツが笑う顔がチラつく、嘲笑でも侮蔑でもない、心から喜んで、誰かと喜びを分かち合うような笑み。
その中にはアタシもいて、確かにそれは嬉しくもあった。
だから、そんな些細なことにさえ喜ぶコイツをアタシは、否定できない。
でも、なら、いったいどうしたらいい?
この心の中のぐちゃぐちゃしたものを、どうやって吐き出したらいいんだ。
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