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「渡守さん、本当のことを話して。私は何があっても味方だから」
「信じられるかよ……」
「私も渡守さんを信じる。だから渡守さんも私を信じて欲しい」
真っ直ぐで曇りの無い瞳、どこまでも見透かされるような透明なそれに見据えられて、遂にアタシの心は決壊した。
「馬鹿野郎、アタシがどれだけ、どれだけ悩んで、こうしたと思ってんだよ。お前が嫌えばそれで済むんだよ!なのに、なんで受け止めようとするんだよ!!」
「渡守さんのこと、少しでも知りたいから」
「それが嫌なんだよ!!!アタシのことなんて知ろうとするな!こんな、穢れた血が詰まった肉袋のことなんて、知ってどうなるってんだよ!!」
「そんなことない。例えそうだとしても、渡守さんはそれをここまで耐えてきたんだから、強い人だよ」
「やめろ!アタシに希望を見せんな!!アタシに手を伸ばすんじゃねぇ!!んなもん見せられたら、アタシだって欲しくなっちまうじゃねぇか!!」
「欲しがればいいんだよ。その権利は平等なんだから、それが辛いなら私も手伝うから」
叫び声とともに放たれる絶望とどうにもならなかった過去、それらを全て投げうってもアイツは全部纏めて返してくる。
まるでキャッチボールだ、傷ついたボールを受け止めて、包装して投げ返す。
そんな行為をしたことも無かったし、受け止めてくれる相手もいなかった。
だから、一度吐き出した投球は止まらない。
なのにアイツは律儀に受け止めて、投げ返してくれる。
そうでもいいのだと、言ってくれる。
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