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「なんで……なんでお前は、こんなアタシのことを信じれるんだよ……」
吐く言葉は尽きた、もう何も残ってない。
何もかも真っ暗で、もう自分がどんな顔をしてるのかさえ分からない。
それでも頬に残る微かな熱だけは確かに感じられていて、その先には真剣なアイツの顔がそこにある。
「あの日から決めてたんだ、渡守さんを信じるって。どんなことがあっても私は渡守さんの味方でいるって」
「なんだよそれ……アタシになんの価値を見てんだよ」
「それは何もないよ、私がするのは渡守さんの味方だけ。何かになりたいなら渡守さんがそれになればいいんだよ」
「なんでだよ……訳わかんねぇよ……」
「じゃあ俗っぽく、渡守さんはなりたいものになればいいし、きっとなれるよ」
どこまでも優しくて、迷いの無い言葉。
ずっとアイツらと周りに利用されて、それしか価値の感じられなかったアタシが、嫌悪しながらもどうしても欲しかった言葉。
だからこの瞬間に悟った、もう無理だ。
もうアタシには、コイツの優しさを拒めない。
「……泣いてるの?」
「わかんねぇよ、んなもん」
「うん、ならこうしてあげる」
そっと肩ごと体が吸い寄せられ、胸の中に収められる。
離れようとしても出来ないのは、もうアタシがコイツのことを受け入れてるからだ。
だからきっと、今だけはかっこ悪い所を許してくれる。
「……辛かった」
「うん」
「不良扱いされるの、嫌だった」
「うん」
「アイツらの装飾品なのが、堪らなく嫌だった」
「うん」
「今回のテストも、凄く悔しかった」
「うん」
「だから、アタシは希望を見たい。アイツらの添え物じゃなくて、アタシの人生を生きたい」
「うん、手伝うよ」
「ありがとう、圭」
「どういたしまして、渡守さん」
「うぅ……うああああああああああああ!!!!」
人前で泣くのなんていつ以来だったのかもう忘れた。
それがアイツの前なのも嫌だったけど、それでも離すことなく背中をさすってくれた。
「辛かったね、頑張ったね。だからもういいんだよ」
その声は聞いたことないほど優しくて、そのまま私の意識もゆっくりと無くなっていくのだった。
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