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『あーテステス、聞こえてますか皆さん。見えてますか皆さん』
スマホの動画で見たのは暗くされた何処かの街並みと顔だけを簡素なお面で隠した少女だった。
その上で声はボイスレコーダーらしきものを使っている。
せめてもの身バレ対策だろうか?それなら制服も隠した方がいいと思うんだけど。
『皆さん、喪った人は居ますか?いなくなってしまった人は居ますか?それを取り返したいと思った事はありませんか?』
「……」
東雲の目が少しだけ影を帯びる、そう言う彼女も動画内の人物の言う一人だ。
夏休みの映画撮影の際に東雲は亡くなったお姉さんこと京子さんを取り戻そうと自分の命を代償としようとした。
それは僕と伊吹、そして京子さんの手によって防がれて事なきを得た。
半年が過ぎた今でもその事件はいいも悪いも全てが東雲の胸の中で深く息吐いている。
でもこういう話を聞くと京子さんの事を思い出すからなのか、動画内の人物が語るそれに微かな寂しさを見せていた。
「東雲?」
「大丈夫、精一杯生きるって約束したんだし」
僕の反応を予見していたのか東雲は微笑みながらそう返す。
それを他所に動画内の人物は話を続けていた。
『私にはいます、ですがその人は今この街に囚われています。この街では死者が蘇り、悪魔の契約で囚われてしまうのです』
「おいおい、死者が蘇るってそんなのあるかよ」
伊吹も合の手を入れるが目は真剣にその動画を眺めている。
伊吹は霊関連のスペシャリストだ、僕は京子さんの一件以外は幽霊は見えないし話す事も出来ないけど伊吹や東雲はそれが出来る。
伊吹はどうやら生まれ持った能力のようで、東雲は京子さんの時以降に目覚めたみたいで、苦労することも多かったらしいけど、僕にとってはたくさんの人物を救える素敵な力だとは思ってる。
そんな二人が真剣に見ているという事は今回もそういう事なんだろうか?
『もしそういう事を許せないのなら未希先街に来てください、そこに貴方の大事な人がいるかもしれません』
そう言って動画内の人物はお辞儀をするとそこで動画は終わってしまった。
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