chapter 1

1/1

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

chapter 1

 玄関の扉を開けると、下には、さっき父が吸っていた煙草の残滓が散らばっていた。何れ風にやられてしまう。ぼくは、何だか胸が躍った。何に対してかは、ぼく自身にも分からない。  ぼくは、煙草が嫌いだ。9歳の時に喘息になってから、あの燻しい臭いがするだけで、息を止めることがしばしばあった。 「なんで近くで吸うの?」 ぼくがそういうと、父は玄関の方へ行った。それでも、玄関に通じる扉を開けるので、彼の移動も意味はなさないのである。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加