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chapter 1
玄関の扉を開けると、下には、さっき父が吸っていた煙草の残滓が散らばっていた。何れ風にやられてしまう。ぼくは、何だか胸が躍った。何に対してかは、ぼく自身にも分からない。
ぼくは、煙草が嫌いだ。9歳の時に喘息になってから、あの燻しい臭いがするだけで、息を止めることがしばしばあった。
「なんで近くで吸うの?」
ぼくがそういうと、父は玄関の方へ行った。それでも、玄関に通じる扉を開けるので、彼の移動も意味はなさないのである。
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