1日目

1/1
前へ
/10ページ
次へ

1日目

神からのお告げを聞いた後、僕は椅子に座り紅茶を飲みながらテレビを見ていた。 テレビでは、SNSなどで「神様からの声を聞いた」と言うものが何万人と現れ始めたということを、何度も報道していた。 中には人々の不安を掻き立てるものもあり、報道の結果というのが、みんなの共通認識となっていた。 まだボタンが押されるかも分からないという状況にも関わらず、ニュースではボタンを持った者を非難するような報道がなされた。 神様からのお告げを聞いてから、ここまでたった数時間の出来事だった。それだけの時間で、今までの平和が消えていくような感触がそこにはあった。 そんな中テレビを見ていると、画面が急に変わった。 画面には、テレビでよく見た、馴染みのある顔をした人が映っていた。この国の内閣総理大臣だった。 そんな国の代表が、テレビ越しに私たちに話しを始めた。 「…私達は先程、世界中の国の代表とコンタクトを取り、防衛軍を結成しました。1週間だけの短期の軍隊ですが、地球の危機とあるならば、手を尽くさない訳にはいきません。…今からそこで決まった事項を皆様にお話いたします」 僕はつばを飲み込み、期待を膨らませ、次の言葉を待った。 「今ボタンを持っている者は、明日と明後日の2日以内に、私達の元に持って来てください。もし2日経っても現れない場合は、世界中のあらゆる技術を用いて、ボタンを探し出します。命の安全は保証できません。それが嫌なら、必ず2日以内に名乗り出てください。いい返事を期待しています」 プツンッ… テレビが元の画面に戻った。 今の報道を聞いた周りの人の声は一つの感情で染まっていた。歩く人の顔は下を向き、誰もがつばを飲み込んでいた。皆、心の何処かで、焦りや不安な気持ちをあらわにしていた。 それもそのはずだ。たった数時間で世界中が団結を始め、さらに命の保証は無いとまで言い切った。それほどまでにこのボタンが、異質の存在であるとういことの証明であり、同時に世界が恐怖に包まれていることを示唆しているということの表れでもあった。 だが、みんなが不安がっている中、僕の気持ちは違った。その報道を聞いて、僕の心は震え上がった。もしかしたら僕は、今まで見たことのないような、歴史の一歩に立ち会えているのかもしれないと思ったからだ。 僕はすぐさま椅子に戻り、次の報道を待つことにした。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加